misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

海外ドラマ Netflix『Happy Valley』シーズン2

Netflixにシーズン2がアップされているのを発見し、すぐに見ました。5月くらいだったと思います。シーズン1を見ていない人は先にそちらを見たほうが楽しめるでしょう。

今回は、メインの事件と平行してもうひとつのサブストーリが描かれます。どちらも灰汁の強い(という言い方はかなりソフトだと、鑑賞後には感じるはず)女性たちが登場し、磁石のような吸引力を発揮します。強く引き付けられますが「惹きつけられる」のではないです。以下ネタバレ含みます。

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http://www.bbc.co.uk/programmes/b06zqjpj

主人公は女性警察官のキャサリン(サラ・ランカシャー、写真右)、レイプされ、息子を産んですぐに自殺した娘の母親で、現在はその孫を育てています。

最初のエピソードでトミー・リー・ロイス(ジェームズ・ノートン)の母親が死体となって発見されます。ロイスとは、キャサリンの孫の父親、つまり娘を死に追いやった張本人(少なくともキャサリンはそう思っています)で、現在服役しています。 

彼は所内で母親の悲報を聞き、母を死に追いやったのはキャサリンだと思い込みます。思い込んだら一直線、その辺の思考回路が単純でいけません。ですが、顔だけみたら、いけてる、そう、彼はハンサムなんですよね。

というわけで、彼には強力なファンがついています。死んだ姉になりすましたフランシス(シャーリー・ヘンダーソン)は、足繁く刑務所を訪れ、ロイスを慰めます。ロイスと面会しているときのヘンダーソンの演技が素晴らしい。囁き声と身の捩らせ方が得も言われぬ雰囲気を醸し出しています。

 

彼女は、『ハリー・ポッター』シリーズに登場した「嘆きのマートル」役の女優さんですが、調べてびっくり。現在51歳ですって。とても見えません。マートルだって女子学生みたいな感じでしたよね?そのとき、ヘンダーソンは40歳くらいでしょうか?ときどき彼女の役が不気味に見えるのは、年齢不詳のオーラのせいなのかもしれません。

 

そのフランシスは、なんとキャサリンの孫の担任になっていたのでした。 子どもの先生が狂信的であることほど、怖いことはないと思いませんか。

 

キャサリンの同僚の身に起きた悲劇、連続殺人犯をとりまく悲劇、相変わらずアンハッピーで暗いドラマですが、キャスティングは最高です。そして私はこの秋、ワインレッドとグリーンの洋服が買いたくなりました。イギリスらしいファッションにも注目してください。

 

関連記事:

海外ドラマ Netflix 『Happy Valley』シーズン1

海外ドラマ『ザ・ナイト・オブ/The Night Of』

アップするのが久しぶりになりました。ここ数か月の間に見たドラマの感想を少しずつ書きたいと思っています。まずはHBOが2016年に製作したこちら。

 

最初はAmazonビデオで1話300円くらいでレンタルして見ていたんですが、途中からHuluで配信が始まったのでそちらを見ていました。ちなみに、Huluの邦題は『ナイト・オブ・キリング 失われた記憶』となっています。

少々ネタバレ含みます。

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http://www.hbo.com/the-night-of

ひょんなことから出会った女性が殺され、情況証拠からパキスタン系アメリカ人の若者が起訴されます。差別、冤罪、司法制度に焦点を当てたクライム・サスペンスで、全編通して暗いです。自分自身が気が滅入っているときは見ないほうが賢明かもー。

NYで起こる事件ということで『Law&Order』が浮かびますが、L&Oでは1時間で解決するところを、このドラマは8時間という時間を割いて、丁寧に描いています。

 

主人公ナズ(リズ・アーメッド)が収監される刑務所(拘置所)は、私が今までにドラマや映画で見たものとはかなり違っていました。個室に入っている囚人もいるんですが、1階は広いスペースにベッドがずらっと置いてあるだけ。その一角がナズの場所です。刑が確定していない人はこちらなんでしょうか。

セリフが極端に少なく静的なイメージのナズですが、その表情から十分過ぎる恐怖が伝わってきます。拘束された後は、もっとジタバタしても良さそうなんですけれどもね。そして驚いたことに、収監されてからは、彼はかなり早い段階で自己憐憫に浸ることよりも、実利主義を選択します。

ナズのことを主人公と書きましたが、実際にこのストーリーをけん引していたのは、彼の弁護士ジャック・ストーン (ジョン・タトゥーロ)、上の写真の人です。彼は白髪が交じる中年で、アレルギー持ち、軟膏塗布で処理した慢性湿疹の足を丁寧にもラップで覆い、サンダル履きを常としています。

私の彼に対する印象はエピソードを重ねるごとに変わっていきました。彼は何度も匙を投げることができたんですけれど、そうはしませんでした。殺された少女が残した猫さえも放っておけませんでした。

 

このドラマに登場する男性陣は、どこか胡散臭いんですが、強迫の下で、もがきながらも自分にできることをしているようでした。ナズを逮捕後に定年退職した刑事も、元ボクシングチャンプの受刑者も。その一方で女性人は・・。

 

最後はどこに落ち着くのかとハラハラとして見ていました。今考えると、このドラマに相応しいエンディングだったと思います。

海外ドラマ『シカゴ・ファイア』シーズン2&シカゴ・シリーズ

AXNで放送されている『シカゴ・ファイア』のシーズン2、そしてスピンオフの『シカゴP.D.』のシーズン1が終了しました。

先月4月20日に、FIREとPDのクロスオーバー・エピソードが連続放送されました。前半はFIREのS2,Ep20「暗黒の一日」、後半はPDのS1,Ep12「午後8時30分」に当たります。どちらも毎週のシーケンスが狂うことがないようにスケジューリングされていました。

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http://www.nbc.com/chicago-fire

PDの次エピソード(Ep13)で、アダムが警官バージェスに対して、クロスオーバーエピで被害に遭った姪のことを尋ねるシーンがありました。もし放送日が正しいシーケンスになっていなければ、何のはなし?となるところですが、そうならずにすみました。完璧でしたねー。

これまでも、CSIやNCIS、L&Oなど、他の作品でもクロスオーバーはありました。が、シカゴ・シリーズは、通常シーケンスのエピソード中でも、3作品(病院を舞台にしたもう1つのスピンオフ『シカゴ・メッド』を含めて)の間をキャストが行き来しています。実際、撮影現場も近いのでしょうか。

さて、「暗黒の日」に話しを戻します。チャリティ・マラソンの日、病院で大規模な爆発テロが起きます。たまたま手伝いに来ていたケリーとドーソンですが、爆発の後、ドーソンが行方不明になります。

ドーソンがいなくなり焦るケリー、一丸となってドーソンを探すFIREチーム。もちろん、瓦礫の隙間にいるドーソンを見つけ出したのは恋人のケリーで、二人は再会を喜びます。晴れて、めでたしめでたし。ってことになったんですが、私は一気に興醒めしてしまいました。

これでは、まるで昼メロではないですか。私利私欲のない人道的な救助活動を見たいと思っている視聴者(私のことです)にとって、これは必要でしたか?急にお安いソープオペラになってしまったと感じたのは私だけでしょうか。

被害にあった二人の子どものエピソードだけで十分感傷的だったはず。ドーソンもシェイも被害に合う必要などなかったと思います。ドラマはバランスが重要だと思うんですけれどもね。

 

このエピに登場した女医シーランは『メンタリスト』でCBI捜査官のグレース・ヴァンペルトを演じたアマンダ・リゲッティでした。見ているときは気付きませんでした。何のフィルターも通さずに見た彼女は、優雅で存在感がありました。なので、『シカゴ・メッド』のメンバーになるのかと勝手に推測していたんですけれど、実際には違いました。

その『シカゴ・メッド』はNHK BSプレミアムで放送中です。本国では、MEDは2015年11月からで、これはFIREのシーズン4の途中からスタートしたことになります。

AXNでFIREとPD、NHKでMEDを見ていると、MEDだけ時系列がずれているので、驚くことがあります。FIREのセブライドがMEDの看護師といちゃいちゃ。AXN時系列では、セブライドはPDのリンジーといちゃついているのに、とか。ま、独身でハンサムなので、そういう役どころになるんでしょうか。

 

現在、本国ではシカゴ・シリーズの4作目となる『シカゴ・ジャスティス』が放映されています。すごい勢いですねー。主演はフィリップ・ウィンチェスター、『ストライクバック』に出ていた人です。骨ばった感じが「ジャスティス」に合います。こちらはPDと連携して、L&Oみたいになるんですかねー。ひゃー楽しみ。

 

海外ドラマ 2017/03 配信ドラマ

今ネット配信で少しずつ見ているドラマを紹介します。最近は、有り難いことに海外ドラマもいろいろな方法で見ることができるようになりました。以下は、今、見始めたドラマで、現在進行形のものです。継続するか、最後まで見るかどうかはわかりませんが、もし最後まで見て良かったら、またここに感想を書きたいと思います。

 

Amazon『スニーキー・ピート』Sneaky Pete

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シーズン1の全10話が配信済みです。あの『ブレイキング・バッド』のブライアン・クランストンが製作総指揮をしていて、本人も出演してます。

同房者ピートがのべつまくなしに自分の家族について話すのを聞くことにマリウス(ジョヴァンニ・リビシ)は、2年を費やします。マリウスが出所するとき、地下カジノを所有しているギャングのヴィンス(これがブライアン)に追われていることを、弟によって知らされます。

彼は身を隠すため、ピートになりすまし、彼の家族の所に身を寄せます。ピートは家族と20年以上も疎遠なので、家族はマリウスをピートと思い込み温かく迎え入れてくれるんですね。

ピートの家族はBail Bondsビジネスをしているんですが、これが最初よくわからなかったです。米ドラマの裁判でよく目にする保釈金制度ですが、この保釈金を貸して利息で儲けるビジネスなんだそうです。保釈金は被疑者が逃走せずに出廷すれば戻ってきますが、逃亡したら丸損になるわけです。

ジョヴァンニ・リビシマリウスはスニーキーにはまり役、ピートのいとこの一人、子どもがそのまま大人になったようなテイラー役のシェイン・マクレーもいいです。少し前に放送した『シカゴ・ファイア』にも出ていました。

 

Amazon『96時間 ザ・シリーズ』Taken

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映画『96時間』シリーズでリーアム・ニーソンが演じた主人公ブライアン・ミルズの若かりし日を描いた作品です。ドラマ『ヴァイキング』でラグナルの兄役のクライヴ・スタンデンがブライアンです。彼を現代のセットで見てみたいという理由で鑑賞したんですけれど、1話目はいまいち理解できず。

映画の影響で、最初電車の中でブライアンの前に座っている女性を彼の娘と思ってしまうからいけません。その女性は妹でした。まだ結婚する前の話です。いずれにしてもブライアンの家族にだけはなりたくないというのはわかりました。

現在配信されている全4話を見ました。これは元になった映画のことは忘れて、ブライアンを中心としたCIAのシークレット・チームの活躍を描いた1話完結のドラマとして見たほうが楽しめます。

 

Amazon『ユー・アー・ウォンテッド』You Are Wanted

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ドイツのドラマです。珍しいでしょう?現在3話が配信済みです。

ホテルに勤務しているルーカス(マティアス・シュバイクホーファー、ドイツでは有名な映画スターなんだとか)は、愛する妻子と何不自由なく生活を送っていました。ところがある日、自分がハッキングされていることに気付きます。

その手口があまりにも巧妙なため、周りはそれが理解できず、彼に疑いを持ちはじめます。とても強そうにはみえないルーカスですが、自分を貶めようとしている犯人を探すために奔走します。

 

Hulu『パワー』Power

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こちらは Starz のオリジナルドラマです。現在シーズン2が毎週木曜日に配信されているよう。私はまだシーズン1の途中までしか見ていないんですが、なかなかのモブドラマです。

世界的ラッパーの50セント(名前です)がクリエーターで、主人公はジェームズ・セントパトリック(オマリ・ハードウィック)、通称「ゴースト」。表の顔はNYCで人気のクラブのオーナー、そして裏の顔は麻薬ディーラー。

彼はお金持ちなので、彼や奥さんが身に着けているのはハイブランドのものばかり。そこをチェックしても面白いかも。

 

Hulu『New Girl ~ダサかわ女子と三銃士』

FOXで再放送していたのを見ていたんですけれど、Huluでも配信されているのを知り最初から見ることに。30分弱なので、手軽に見れるし、元気になれます。今、シーズン1を見ていますがジェシーが若くて可愛いです。

 

Hulu『僕が教えるアメリカ成功術』How to Make It in America

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HBOが2010年に作成したドラマで、2月から毎週火曜日に配信されているようです。ドラマの紹介には「ニューヨークのファッション業界に殴りこみをかけた若者のアメリカンドリームを描く青春コメディドラマ」と書かれています。

主演はブライアン・グリーンバーグという人、『One Tree Hill』シリーズに出演していたらしいです。コメディということもあり、リアルに悪いヤツは登場せず、楽しく鑑賞できます。また、ドラマ中によく日本のことが話題になるのも嬉しいところ。

ナルコスで強面ガチャ役のルイス・ガスマンが、主人公の親友のいとこ役で出ています。存在感ありますねー。今CBSで放送している医療ドラマ『Code Black』では、ERの看護師を演じている模様。ガチャがナースですよ!何としても見てみたいです。

 

2017年5月7日追記:5月13日から、Dlifeで「コード・ブラック」シーズン1の放送が始まります。楽しみー!

 

こうやって見てみると、AmazonとHuluだけになってしまいました。Netflixは『ラスト・キングダム』のシーズン2が始まったら見ようと思っています。

 

2017/03 NY旅行

先日、友人たちとNYCに行ってきました。3泊5日の予定でしたが、雪のため、帰国便が欠航となり、思いがけず4泊6日の旅となりました。以下に少しだけ、まとめてみました。

 

mina66.hatenablog.com

小説『虎狼』モー・ヘイダー

『虎狼』モー・ヘイダー 

虎狼 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

虎狼 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

キャフェリー警部シリーズの7作目にあたります。キャフェリーは仕事の傍ら、幼い頃に行方不明になった兄の消息を突き止めようとしている刑事です。今作品でわかったのは、彼はジョージ・クルーニー似ということ。ちょっと私の想像とは違っていたんですが、まぁいいでしょう。ハンサムなことに変わりはありません。

今回の事件は、村から離れた邸宅に、2人の男が侵入し、そこに住むオリヴァー老夫婦とその娘が囚われてしまうことから始まります。そんな折、偶然にもキャフェリーのもとへ、オリヴァー家の飼い犬が姿を現します。

そして、『喪失』のウォーキングマンが、再びキーマンとして登場。キャフェリーは彼に示唆されて、犬の飼い主を探すことになるんですが、この捜索は意外な方向へと進んでいきます。

メインの事件に関しては、イヤミスと言ってもいいと思うので、好き嫌いがはっきりわかれるかもね、と思います。が、事件の真相を知ったからといって、そのまま本を閉じてはいけません。そのあとに、ウォーキングマンがキャフェリーの兄の死の真相について語るシーンがあるのでお見逃しなく。

ほかのモー・ヘイダー作品についてはここに書いています。

 

『邂逅 (シドニー州都警察殺人捜査課) 』キャンディス・フォックス 

邂逅 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

邂逅 (シドニー州都警察殺人捜査課) (創元推理文庫)

 

こちらは、オーストラリアのキャンディス・フォックスによるデビュー小説です。警察小説というにはかなり異色です。原題にもなっているハデスの存在感が大きく、冒頭、彼の身に起きたことから一気に引き込まれました。

シドニー州都警察殺人捜査課に異動してきたという刑事フランクがこの小説の主人公だと思うのですが、灰汁の強いキャラクターばかりの中で、この人はいたって普通っぽい。コントラストがきいているとも言えます。

彼の相棒となった美人刑事エデンとその兄エリック。海底から遺体の入ったボックスが20も見つかったという事件の捜査と平行して、兄妹の生い立ちについても明らかになっていきます。

 

『棺の女』リサ・ガードナー

棺の女 (小学館文庫)

棺の女 (小学館文庫)

 

この著者の本を読んだことがありませんでした。リサ・ガードナーで検索すると、ラブ・サスペンスの新女王などと書いてあったりするので、ちょっと敬遠していました。

ですが、本書は面白かったです。主人公は20代の女性、フローラ。ある夜、飲んでいた店のバーテンダーにさらわれてしまいます。フローラはガレージに監禁されたものの、自分の身を守るために犯人を殺してしまいます。

現場に駆けつけた女性刑事は、フローラの素人離れした身の守り方に不信感を抱く一方で、犯人と3人の女性失踪事件との関連を捜査することに。そして、フローラは過去に起きた拐監禁事件の被害者だと知ります。ところがその矢先、フローラがまたもや失踪してしまいます。 

 

少し前の記事『ザ・ミッシング』を見ている間、何度もこの小説のことを思い出しました。

 

海外ドラマ Hulu『The Knick/ザ・ニック』

以前の記事で、アメドラの『The Knick』が見たいと書いたのですが、遅まきながらHuluで見れると知りました。

このドラマの舞台になるのは、1900年代のNY、ニッカボッカ病院です。この病院は「ニック」と呼ばれています(「ニック」は人の名前ではなかったんですね)。ここで働く革新的な医療を進める天才外科医ジョン・サッカリーをクライブ・オーウェンが熱演しています。

スティーブン・ソダーバーグが監督をしていて、その映像はビンテージ写真のようにセピア色で美しいです。建物、家具、小物や登場人物のファッションに至るまで、すべてにこだわりが感じられます。1シーズンは10エピソードで構成、以下ネタバレ含みます。 

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http://www.cinemax.com/the-knick/

 

確かにスタイリッシュな映像は素晴らしく、手術のシーンも凝っていて(グロテスクともいいます、血が苦手な人には不向きでしょうね)目を見張るものが多くありました。が、ストーリーラインは最初、これといって面白くなかったです。これは私が勝手に、『Dr.House』のような医療ものだと思いこんでいたせいもあります。けれども、ガマンが必要なのは少しだけ。シーズンの途中からは加速して面白くなっていきます。あの控えめなBGMも、今では大好きに。

 

最初につまらないと思ったのには理由があります。主役のサッカリーに共感できなかったからです。彼は、不愛想で自滅的、そして性差別と人種差別主義者です。この時代の白人にとって、後者は当たり前だったのかもしれませんが。よく見かけるアンチ・ヒーローとは言い難いです。

意欲的な新入り、アルジャーノン・エドワーズ医師を、サッカリーは彼が黒人だという理由だけで拒絶します。差別で手術をさせてもらえないエドワーズは、地下でこっそり病気や怪我を負った黒人たちを診るようになります。が、白人のサッカリーがダメ人間で、黒人のエドワーズが清廉潔白というような、ありきたりな描き方にはなっていません。

サッカリーは薬物にどっぷり依存(彼のモデルになっている実在する医師はコカインとモルヒネ中毒だったらしいですけれど)しています。ですが、結局のところ、彼は患者を救いたい、医療をもっと良くしたいと思っています。自らに薬を打っては、寝食を忘れて実験に没頭します。そう、彼のプライオリティは常に研究にあるようでした。彼が発見するものが、今後多くの人々を救うのだとしたら、わたしたちは彼に感謝することになるでしょう。

試行錯誤の時代なので、ある意味、手術台に乗った患者はそのまま実験台になるわけです。ドラマで描かれる手術はどこまでがフィクションで、どこからが真実なのか、わかりませんでした。大学の講堂のようなところで、観衆に囲まれて行われる手術、梅毒で鼻を失った女性に腕からそのまま皮膚を移植したり、別の少女には、執刀しているサッカリーの腕から直接患者に輸血したりと、「それあり?」という驚きの連続でした。

つまるところ、この時代は生き長らえるのが困難だったということは間違いありません。 ペニシリンが発見されるまでは、あと何十年も待たねばならないでしょう。移民の間で結核が流行ると、隔離することしかできなかったでしょう。また腸チフスや梅毒など、この時代には救えなかった病気がどれほどあったでしょうか。