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『人形(ひとがた)』 + モー・ヘイダー

翻訳小説

これはジャック・キャフェリー警部シリーズの第6作目で、前作の『喪失』の1年後の話しということです。私はこの本を読んでから、1年前の『喪失』を読み、そして、1作目、2作目と続けて読みました。

 

以下、読んだ順から書いています。

 6:人形(ひとがた)

人形(ひとがた) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

人形(ひとがた) (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

犯罪歴のある患者を収容する精神科医療施設内で、患者が死亡したことから、事件は広がりをみせます。上級職員のA・Jは、退院した患者の関与を疑うのですが、上層部を気にする院長のメアリーは対応を渋ります。悩んだ末、A・Jは独断で警察のキャフェリー警部に相談する、というものです。

精神病院で起きる殺人ミステリー。シリーズものですが、本作はどちらかというとA・Jが中心に描かれていて、読むほどに彼のロジカル思考と優しさに高感度が増していきます。伏線の張り方がうまく、途中からは犯人を捜して一気に読みました。

さて、シリーズ主人公のキャフェリー警部ですが、彼は孤高でハンサム(女性が彼をみるときの描写がそれを物語ります)、小さい頃に兄が行方不明になったのがトラウマになっています(未解決事件がトラウマって、シリーズものとしてはお約束ですね)。また、過去に潜水捜索隊隊長のフリー巡査部長をかばい、大きな秘密を抱えていることがわかります。その秘密とは何なのか、何がそうさせたのかを知りたくて、前作『喪失』を読んでみました。

 

 5:喪失

喪失〔ハヤカワ・ミステリ1866〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

喪失〔ハヤカワ・ミステリ1866〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

当初は単純な窃盗と思われたカージャック事件が、後部座席に乗っていた少女目的だったことがわかり、事件の様相は一変します。姿なき犯人は、焦燥にかられる警察と被害者家族を挑発してくるようになります。こちらはMWA賞最優秀長篇賞の栄誉を射止めた作品です。

本作に登場する哲学者めいた謎のホームレスのウォーキングマンのキャラクタが魅力にあふれています。本作にしか登場しないようですが。

サブストーリーになっているキャフェリー警部の秘密、フリーが何をしたのかやっと知ることができました。本作の最後はフリーが病室にいるところで終わっています。窓から、雲ひとつない空に煙がまっすぐ立ちのぼっているのを見ます。その煙は彼女にメッセージを送っているようでした。「なにかがおまえのもとにむかっている」と。これはキャフェリーのことだったのでしょうか。

そして、もっとシリーズを読みたくなり、図書館からシリーズ1作目と2作目を借りてきました。

 

1:死を啼く鳥

死を啼く鳥 (ハルキ文庫)

死を啼く鳥 (ハルキ文庫)

 

ロンドン、ノース・グリニッジで5体もの娼婦たちの腐乱死体が発見されます。異様なことに、被害者たちの胸には解剖された痕跡が残っていました。この連続殺人の捜査に圏内重要犯罪捜査隊警部キャフェリーが乗り出します。

シリーズの最初、キャフェリーはロンドン警視庁の重要犯罪捜査課に所属していたんですね。事件そのものは猟奇的な連続殺人で、描写が残虐なのでなるべくイメージしないように(!)読みました。処女作なのに、プロットもしっかりしていてテンポも良くかなり高い完成度だと思います。

キャフェリーはまだ若い(30代半ば)けれど、鋭い観察眼と推理力を持ち合わせ、今後の活躍を暗示しています。行方不明になった兄のエピソードもしっかりあります。彼のトラウマは、彼の心のかなりの部分を占めていて、その疲弊感が伝わってきました。

 

2:悪鬼(トロール)の檻

悪鬼(トロール)の檻 (ハルキ文庫)

悪鬼(トロール)の檻 (ハルキ文庫)

 

シリーズ2作目です。自宅で監禁され、瀕死の状態で発見されたピーチ夫妻。犯人に連れ去られたひとり息子のローリーは懸命の捜査もむなしく遺体で発見され、子供たちの間では犯人像として「トロール」という不気味な名前が囁かれていました。

事件の真相は想像を絶するものでした。それは置いておいて、ミステリーとしての読み応えは十分です。私は最後まで犯人がわかりませんでした。って、よく考えてみたら、このシリーズは常にそうでした。

そして、驚くべきは、キャフェリーの兄の消息が判明したことです。といっても、このことを知っているのは、読者だけなんですが。想像はしていたけれど、それ以上に物悲しい結末でした。翻訳されていない3・4作目では何か言及されていたのでしょうか?気になります。

 

本の「訳者あとがき」でわかったことですが、キャフェリーは3作目でエイボン・サマセット警察の重大犯罪捜査隊に移り、そこで、潜水捜索隊隊長のフリーと出会うことになったんだそうです。5作目では二人はぎくしゃくしていたのですが、次回作では何か進展があるのかもしれません。