『夏に凍える舟』ヨハン テオリン

少し前に本屋で『夏に凍える舟』を見つけました。確かこの著者の本は読んでいたはず、と思っていたのですが、実際に読んだことがあったのは1作目『黄昏に眠る秋』だけでした。なので、1作目をもう一度読み直し、それから続けて2作目以降を続けて読みました。

著者のヨハン・テオリンは、スウェーデンのジャーナリストで、2007年『黄昏に眠る秋』で推理作家としてデビューしました。そして、この作品でスウェーデン推理作家アカデミー賞の最優秀新人賞を受賞。翌2008年に発表した『冬の灯台が語るとき』では、同賞の最優秀長編賞とガラスの鍵賞、さらにはCWA賞のインターナショナルダガー賞を受賞しています。すごいですよね。

これらは、著者が幼い頃から毎年夏期を過ごしていたバルト海エーランド島を舞台に、そこで聞いた幽霊譚や民話が作品のモチーフになっているんだとか。エーランド島シリーズは全4部作で、秋冬春夏という順番になっています。ポケミスの表紙もシリーズを意識した絵になっていてステキです。

シリーズに共通して登場するのは、元船長の老人イェルロフ・ダーヴィッドソン。彼が探偵役となり、事件を解決してゆくというミステリーです。一作ごとに老いは確実に進んでいますが、彼はそれを受け入れてジタバタしたりはしません。

彼は悲観にくれる人、脅える人を見つけたらそっと寄り添い、耳を傾けます。翻訳が良いせいか、彼の独特な話し方が味わい深くて気に入っています。

 

 4:夏に凍える舟

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

夏に凍える舟 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

こちらがシリーズの最新刊で、最終作です。前の3作とは異なり、夏のにぎやかな祭りの様子が描かれます。今までは人がいない寂しいイメージだったんですけれどね。そんな賑わいの中、復讐を誓うある男が島に帰りついていました。

その祭りには、イェルロフの娘と孫たちも来ていました。また、他の作品に登場した人物も顔を出します。

 

 1:黄昏に眠る秋

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

黄昏に眠る秋 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

シリーズ1作目。二十数年前に行方不明になった少年が事件当時に履いていた靴が、祖父のイェルロフのもとに突然送られてくることから物語は始まります。イェルロフは、次女で少年の母のユリアとともに、ふたたび孫を探しはじめます。

映画化もされたようです。2013年制作のトレイラーがYouTubeにあります日本でも見れると嬉しいのですが。

 

2:冬の灯台が語るとき

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

冬の灯台が語るとき (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

東海岸に舞台を移します。灯台近くに引っ越してきた夫婦と子どもたち。そのうちの一人が亡くなります。その死の背景には、思いもかけないことがありました。

この本で1作目に登場した息子を亡くした次女ユリアは、登場こそしませんが、再婚し連れ子3人と幸せに暮らしているのがわかり、ほっとしました。

 

3:赤く微笑む春

赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

赤く微笑む春 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

 

コテージで暮らす男性が、難病の娘の手術が迫る中、疎遠にしていた老父から電話が入ります。このことがきっかけで、彼は父親の暗い過去を探り始めることになります。

こうやって、4作読んでみると、主人公はいずれもかなり深刻な状況に置かれています。どの本も現在と過去の話がパラレルで語られ、過去が現在へとリンクするようになっています。これでシリーズは終わってしまったんですが、今後はどのような作品になるのか楽しみです。