ナショナル・シアター・ライヴ『ハムレット』
ナショナル・シアター・ライヴ(NTL)をずっと見たいと思っていました。Bunkamura ル・シネマ(渋谷)でカンバーバッチ主演の『ハムレット』をアンコール上映したのを機に、やっと観ることが出来ました。
NTLでは、イギリスの国立劇場ロイヤル・ナショナル・シアターが名舞台をデジタルシネマ化し、世界各国の映画館で上映しています。今回観た『ハムレット』は、2015年8~10月にロンドンで上演され、ベネディクト・カンバーバッチが主演したことで大きな話題(確か、チケットを取るのも大変だったと記憶してます)となりました。
もちろん、本来は劇場で見たいところです。その方が臨場感をより楽しめるでしょう。けれども、映画のメリットもあります。まず日本で鑑賞できるのが一番ですが、字幕はありますし、役者のアップも見れるので、彼らの細かな感情表現を見ることができます。
わたしは、NTLもシェイクスピアも初めてで、ハムレットがどういうストーリーなのかも知らずに鑑賞しました。シェイクピアということで、古めかしい難解なストーリーかもしれないと思い、昼寝をし体力を温存して行ったんですけれど、そんな心配は無用でした。3.5時間(途中20分の休憩あり)全く飽くことなく楽しめました。
まず感激したのが、その舞台セットの素晴らしさ。劇場だと舞台を変えるときが大変だと思うのですが、それも様々な工夫をしていました。後半からは奥行きを感じられる立体的な空間が演出されていました。
主演のカンバーバッチは、水を得た魚のように生き生きとしていました。舞台で映える人ですね。彼の良さを引き出すような脚本だったのかもしれません。
俳優たちの軽い身のこなしも驚きました。階段を下りるシーン1つをとっても、滑るように駆け降ります。あんなに運動しながら、台詞を言うのは、並大抵ではないように思います。
それから、いろんな意味でのミックスアップ。まず、衣装なんですが、時代衣装の人もいれば、現代風の人も。ハムレットの親友ホレイショは、現代の若者風で、普通のカジュアルウェアにバッグパック、首にも腕にもタトゥがありました(劇場では見えないかも)。小道具もしかりです。
また、ハムレットの恋人オフィーリアの兄レアティーズ役は黒人の俳優が演じています。今年のトニー賞で最多受賞した『ハミルトン』も、実在する白人の登場人物を黒人やラテン系の俳優が演じていて話題になりました。私はこのレアディーズがとても良かったです。
今、考えてみると、台詞も、時代を感じるものがあると思うと、現代らしいものもありました。一見統一感がなくバラバラになりそうなものを1つに融合させたこのハムレットは、スタンダードではないかもしれなけれど、私にとっては魅力的でした。
おじいさんたちも元気で可愛らしくて、素敵でした。女性キャストも負けていません。オフィーリアもハムレットの母親も、そのパフォーマンスは素晴らしかったです。
また、機会を見つけて観にいこうと思います。