海外ミステリ小説2016 秋から冬まとめて
秋から最近までに読んだ本を一気に紹介します。少々ネタバレ含みます。
<フランス>
カミーユ・ヴェルーベン警部シリーズは、『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス」そして本作『傷だらけのカミーユ』と3部作になっています。つまり、これで終了なんですね。寂しいです。
今作品を読みながら、ヴェルーベン班の発足当時のメンバーを思い出しました。どのメンバーも個性的でしたね。そして時間の経過とともに様々な変化をとげていました。私のお気に入りのハンサムはルイはあまり変わってはいないようでしたが。
どこまでも幸せにはなれないカミーユ。心中お察しするも、私がどう思おうがおかいなく彼はどこまでも突っ走ります。タイトルの「傷だらけ」は、実際に暴行を受けたカミーユの恋人アンヌではなく、カミーユなのです。
私はルメートルのキャラクタの描写がどこか文学的でとても気に入っていました。別のシリーズが出たら、必ず読みたいです。
<アメリカ>
『煽動者』ジェフリー・ディーバー
私自身はディーバーといえば、リンカーン・ライム派なんですけれど、今回のキャサリン・ダンスシリーズのこの本は読みやすくて面白かったです。彼女が女性としてやり過ごさなくてはいけないことや、女性だからこそ奮闘する姿に、思わず応援したくなりました。ディーバーという人はつくづく女性の心理が良くわかっているなぁと感心しきり。
ディーバーには珍しくハーレクイン風のロマンス(とってもベタベタではありませんよ)も楽しめるというおまけもあります。それなのに、この邦題、少し硬いような気がしませんか。
『転落の街 上下』マイクル・コナリー
ハリー・ボッシュ・シリーズの前作『ナイトドラゴン』には、がっかりさせられたので、あまり期待せずに読みました。しかし、これが久々(!)のヒット。ボッシュらしさが復活しています。いつまでも現役で頑張ってほしいと思えた一冊です。
Amazonドラマ『BOSH』を見ているので、以来、私はこのシリーズを読むときはタイタス・ウェリヴァーを思い浮かべながら読んでいます。来年にはシーズン3が、配信される予定です。そしてもうシーズン4の製作も決まっているんですね。こちらも楽しみ。
『生か、死か』マイケル・ロボサム
舞台がアメリカなので、こちらのカテゴリに入れましたが、マイケル・ロボサムはオーストラリア出身の小説家です。これは、英国ゴールド・ダガー賞を受賞し、米国エドガー賞の最終候補になった作品で、スティーヴン・キングが絶賛したらしい。
現金輸送車襲撃事件の共犯として刑に服していたオーディ・パーマー。出所日前夜になってオーディは突如脱獄を果たします。後述する『ザ・サン』を先に読んでいた私は、また脱獄して復讐か、と思いつつ読み進めました。が、そこには意外な展開が待っていました。
登場するサブキャラたちがいいです。デジレー刑事の続編があったら面白そう。
<ノルウェー>
『その雪と血を』ジョー・ネスボ
その雪と血を(ハヤカワ・ミステリ) (ハヤカワ・ミステリ 1912)
- 作者: ジョー・ネスボ,鈴木恵
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/10/06
- メディア: 新書
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40年近く前のオスロを舞台にしたパルプ・ノワール作品。パルプ・ノワールというのは「ザラ紙に書きなぐられた暴力と犯罪とイメージさせる”パルプ”という言葉の持つイメージを、孤独と愛憎とトラウマから屈折していく精神を描いた暗黒の文字に重ねたもの」なんだそうです。
そういわれてみれば、そうかもね、などと思います。いつものネスボとは一味違い、殺し屋の恋物語です。ハヤカワ・ポケット・ミステリとしては、例をみない薄さなので、あっという間に読めてしまいます。
帯にレオナルド・ディカプリオ主演で映画化と書いてありましたが、本当でしょうか?
こちらはネスボらしいストーリーになっています。父親が汚職警官として自殺して以来、生きる意味を見失った息子のサニー。ある日、父の死の真相を知った息子は脱獄し、父の汚名を返上するために動き出すといった、サニーの再生ストーリーです。
こちらもジェイク・ギレンホール主演で映画になるようです。ネスボは、映画界でも人気なんですねー。来年公開予定。これは見るしかないでしょう。
『湖のほとりで』カリン・フォッスム
カリン・フォッスムはノルウェーの作家で、私は初めて読みました。この作品は、セイエル警部シリーズの2作目。リヴァートン賞、ガラスの鍵賞などの北欧圏における名誉ある賞を獲得しています。私は観ていませんが、イタリアで映画化もされています。
村の誰もが知る女子高校生アニーが小さな村で死体となって発見されます。死体には争った形跡がないことから、自殺か、あるいは顔見知りの犯行ではないかと推測され、早期解決すると思われたのですがー。
派手さはなく、地味な作品なんですけれども、丁寧な描写が好きです。セイエル警部の真摯な姿勢で臨む淡々とした捜査に引き込まれます。
『晴れた日の森に死す』カリン・フォッスム
こちらがセイエル警部シリーズの3作目です。この秋に刊行。実はこちらを先に読んで、面白かったので、前作品になる『湖のほとりで』を読みました。
ノルウェーの森の奥でおきた殺人事件の現場で精神病院に入院中の青年エリケが目撃されます。そんな折、銀行強盗が発生し、エリケは逃走する強盗犯モルガンの人質になってしまいます。
私は単細胞で素直なモルガンの言動、心の声に、何度も笑いました。彼が他人と交流するのが難しいエリケと心を通わせてゆく過程が微笑ましかったです。フォッスムの登場人物一人ひとりに寄せる眼差しが温かいです。
<イタリア>
『パードレはそこにいる』サンドローネ ダツィエーリ
ローマで起きた児童失踪事件。その裏には、幼い自分を誘拐・監禁した犯人「パードレ」が存在すると信じる失踪人コンサルタントのダンテと、過去の捜査事件で心身のダメージを受けた女性刑事コロンバの二人の捜査が始まります。
なかなか他にはないプロットで楽しみました。ただ、コロンバの粗削りさにはちょっと引いてしまうことも。