misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

2021年4月 海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説のこと

どこまで続くかわからないですが、4月に観たドラマ、映画、読んだ小説のことを今月も書きたいと思います。4月は本当に久しぶりに、近所の映画館に足を運びました。観たのはアカデミー賞3冠の『ノマドランド』で、やはり大きなスクリーンはいいなぁとしみじみ思いました。

海外ドラマ

気付いたら、ほぼWOWOWばかりになっている。最近はNetflixで観たいドラマが見つからない。料金改正で値段は上がったのに見るものがないとは(;ω;)

エージェント・ハミルトン~裏切りのミッション~(WOWOW

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スウェーデン発の人気スパイ小説のドラマ化。ハミルトンは過去に映画化もされている。
ドラマはストックホルムで起きた爆破テロ事件が幕開けとなる。その日、ハミルトンはあるミッションのため、アメリカから戻ってきていた。彼の行動は謎が多いものの、アクションは見応え十分で、緊迫感があってグイグイ引き込まれた。けれど、最後まで見終わった後でも、結局CIAは何がしたかったのかよくわからなかった。うーん、次シーズンを見ればわかるのかしら?

The Bay ~空白の一夜~(WOWOW

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ITVのクライムサスペンス・シリーズ。どこか既視感あるなぁと思ったら、そう『ブロードチャーチ』ですかね?
海辺の町で双子の高校生が失踪。事件を担当する刑事リサ・アームストロングが容疑者と抱えた秘密とは?捜査の行方は?
イギリスらしいよくできたサスペンスで、一気に鑑賞した。ーけれど、主人公リサには共感はできなかったし、母親が忙しく働いているからってあの子どもたちはどうなの?と思わざるを得なかった。双子に起きたことは受け入れることができたとしても、リサの子どもたちをいわゆる"普通の子"としては受け入れ難い。子育てが一層大変なことになっているような気がして滅入ってしまった。

FBI2:特別捜査班(WOWOW

ディック・ウルフのNY FBI支局を舞台にしたドラマの第2シーズンがスタート。シーズン1は捜査官マギーと”OA"の二人がメインだったが、2になるとアナリストだったイゾベルが捜査官になり、その相棒として新レギュラーが追加された。そして、その他の人たちも少しだけスポットが当たるように。今までは本部のオフィスでPCに向かっている調査官みたいな人がそこそこいても、言葉を発することもなくただの背景でしかなかったけれど、今シーズンになってからは彼らの出番も少しずつ増えてきた。ストーリーの幅も広がるだろうか。

FBI:Most Wanted~指名手配特捜班~(WOWOW

上の『FBI:特別捜査班』のシーズン1で初登場した、凶悪な逃亡犯を追う捜査官チームがスピンオフの新シリーズとなった。
本家より、チーム一体感があって好きかな。

LAW & ORDER: 性犯罪特捜班 シーズン21(FOX/Hulu)

こちらも引き続き鑑賞。

映画

ノマドランド』を映画館で鑑賞した以外は動画配信で観たものです。適当にサーフィンしながら選んでいるので、古い映画も含みます。

ザ・ライダー(Amazon/Neftlix)2017

ここに書きました。

ノマドランド 2021

ここに書きました。

ノクターナル・アニマルズ(Amzon/Netflix)2017

2017年に小説を読み、その後映画化されたのは知っていたけれど、小説の中の小説があまりにも暴力的で怖くて映画を見れなかった。最近になってトム・フォードが監督をしていたことを知って興味が湧き、恐る恐る見てみることにした。やはり、映像になるともっと怖い!でも見てしまったら、もう離れられない。一時とて目を離すことができなくなってしまう。

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アートディーラーとして成功を収めているものの、夫との関係がうまくいっていないスーザン。ある日、そんな彼女のもとに、元夫エドワードから小説の原稿が送られてくる。小説のタイトルは「ノクターナル・アニマルズ」つまり「夜の獣たち」。
映画は現実セカイと、小説のセカイが平行して描かれる。元夫(エドワード)と小説の中に登場する夫(トニー)を一人二役で演じるのはジェイク・ギレンホール。言わずもがな、その演技力の高さに目を見張る。

スーザンは小説「夜の獣たち」の主人公トニーの妻に自分を投影させる。小説でトニーの娘に危害が及ぶと、スーザンは自分の娘に電話をして無事を確かめるくらいに。
もちろんトニーはエトワードなのでしょう。
では夜行性の獣とは誰か?えーと、ここに眠ることができない人がいるではないか。スーザンは不眠症で、医者に観てもらうよう、友人に言われていたのでは?

最初の結婚生活中に、後に二番目の夫になる母親お墨付きの男性に付き添ってもらい、密かにエドワードとの子を中絶し、あっさりエドワードを捨てたスーザン。母親のような物質主義者になりたくないと言いつつ、結局母親と同じ道を行くスーザン。獣は、スーザンのことだったのでは?

それにしてもー。あのオープニングは、本当にトム・フォード?と不快な気持ちで観た。あれは虚飾に満ちた生活を送るスーザンを蔑む表現だったのかもしれないという気もするが。

スーザンが小説を読み終えた後、元夫に再会するために選んだ店は高級和食店、服はこれ見よがしの官能的なドレスだった。エドワードはこの勘違い女をどこかでこっそり見ていて、さっさと見限ったのではなかろうか。
ところで、スーザンの現夫、(破産寸前だが)リッチでスタイリッシュ、イケメン浮気夫を演じるのはアーミー・ハマー。ピッタリ過ぎて笑う。

雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(Amazon/Netflix)2015

上の映画を観て、J・ギレンホールが主演しているほかの映画も見たくなり、こちらを鑑賞。こっちは『ノクターナル・アニマルズ』とは違ってゲラゲラ笑いながら観た。
タイトルだけみると、恋愛映画を想像してしまうけれど、実際には違う。妻が事故で帰らぬ人となったが泣けない、妻が運び込まれた病院の自販機でチョコバーが引っ掛かって出てこないほうが気になって仕方ない男を、ギレンホールが演じている。

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道Amazon/Netflix)2005

個性派俳優といって、真っ先に思い浮かぶホアキン・フェニックス。2019年『ジョーカー』での圧巻の演技は、わたしにとってトラウマになるくらい衝撃的だった。
こちら『ウォーク・ザ・ライン』は歌手ジョニー・キャッシュの生涯を描いたラブロマンスで、今から16年前、ホアキンが31歳のときに出演。後にキャッシュの妻となるジューン役には当時ラブコメの女王リース・ウィザースプーン。作中の歌は全て2人の生声であり、演技とともに美声が大絶賛されたらしい。演技に加えて歌もできるんかい!と突っ込みを入れつつ鑑賞。

作中、ジョニー・キャッシュが兄の早死について話すシーンは、J・フェニックス自身の悲劇と重なってしまい、いたたまれない気持ちに。
有名なアーティストを描いた数多の映画で、悲惨な生い立ち、成功からの挫折、そして薬物依存という流れは今までもあったけれど、二人はそれを乗り越えてその後35年連れ添ったというのだから、素晴らしい。

マザーレス・ブルックリン(Amazon/Neftlix)2020

エドワード・ノートンが約19年ぶりの監督業に挑んだ作品で、1950年代のNYを舞台に私立探偵が殺人事件の真相を追うアメリカン・ノワール。障害を抱えながらも驚異的な記憶力を持つ私立探偵のライオネル・エスログ(ノートン)の活躍を描く。
予告でブルース・ウィリスが出てきたので、彼が主役かと思っていたらそうじゃなかった。ノートンはもちろんのこと、脇を固める俳優陣もいい!

ザ・バニシング -消失-(Amazon)2019

公開年が2019となっていたので、割と最近作られた映画と思い込んでいたら、実際には1988年に制作されたものだった。日本では長らく劇場未公開だったが、2019年に公開されたのだそう。
そういえば、スタンリー・キューブリックが「最も恐ろしい」映画と絶賛し、話題になったのがこれだったか・・。
フランスへ車で小旅行に出かけたオランダ人カップル。立ち寄ったドライブインで、彼女がこつ然と姿を消してしまう。レックスは必死で彼女を探すが見つからない。そうして3年が過ぎた頃、犯人がレックスに接触してくる。その目的は?
エンディングに驚愕したが、今考えてみると真相を知らずに苦しみながら生きていくよりも、真実を知りたいと願ったレックスを誰が責められようか、とも思う。

マダムのおかしな晩餐会(Amazon)2018

パリに越してきた裕福なアメリカ人夫婦のアンとボブ。セレブな友人たちを招いてパーティーを開こうとするが、急遽長男が参加し出席者が不吉な13人に!大慌てでスペイン人メイドのマリアを晩餐会の席に座らせたことから、他の客はマリアをセレブだと誤解し、ロマンスへと発展してゆく。
ヨーロッパらしいコメディで笑った。「結末がどうなったのかは、観客の想像にお任せしまーす」というエンディングだったが、わたしはハッピーエンドしか浮かばなかった。
間違いないでしょう(^_^)

ガーンジー島の読書会の秘密(Netflix/Amazon)2019

1946年、作家のジュリエット・アシュトンの元に一通の手紙が届いた。手紙の主、ドーシー・アダムスは "ガーンジー島文学・ポテトピールパイ同好会" の一員であることが書かれていた。ジュリエットは読書会を取材するため、島を訪れ、メンバーと交流するうちに、彼らが重大な秘密を隠していることに気付く。
『ダウントンアビー』の面々が見れて、それだけでちょっと嬉しい気持ちに、、そしてドーシー役のオランダ人俳優ミキール・ハースマン(GOTにも出ていた)が、素朴な雰囲気に合っていて何ともステキ!ミーハーですが、物語のほうもステキな内容です。

キリングフィールド 極限戦線(WOWOW)2019

2008年ジョージア(グリジア)でのロシアの軍事介入中に発生した実際の出来事がベースになっている映画。両国の間で停戦合意が成立する中、ジョージアの農村シンディシにおいて、戦車を率いてなおも侵攻を続けるロシアの大軍に対し、必死に立ち向かうジョージアの兵士や地元住民たちの抵抗するさまを描く。
戦争ならではドンパチするシーケンスもあるけれど、焦点は負傷したグルジア人兵士を救助するために命を危険にさらした村人だった。本国では大ヒットを記録したそう。

イーダ(WOWOW)2013

先月鑑賞した『COLD WAR あの歌、2つの心』が良かったので、P・パヴリコフスキ監督の名前と才能を広く世界に知らしめることになったこちらの映画を観てみることに。
1960年代初頭のポーランド修道院で孤児として育てられたアンナは、実は叔母がいることを知らされる。そこで正式な修道女になる前に叔母に会うことにするのだが、彼女から自分の名前は「イーダ」でユダヤ人だと教わる。そして両親の最期を知るために、叔母と4日間の旅に出るというもの。『COLD WAR』同様、モノクロ映像で淡々と描かれているけれど、その内容は戦慄的だ。全容を知ったイーダの諦観したような姿が目に焼き付く。

ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方(Amazon/WOWOW)2020

自然を愛する夫婦が究極のオーガニック農場を作り上げるまでの8年間を追ったドキュメンタリー。映画製作者、監督として25年の経歴を持つジョン・チェスターが、自身と妻、そして愛犬の姿をカメラに収めた貴重な記録。共生やバランスについて考えさせられたし、自然の素晴らしさに素直に感動した。

the taste of nature 世界で一番おいしいチョコレートの作り方(Amazon)2021

サードウェーブのことも、ビーントゥバーのこともまったく知らなかったので、はじめて知ることが多かった。また10年後にどうなったのか続編を作ってほしい。

小説

父を撃った12の銃弾:ハンナ・ティンティ

最初に本を手にとったときには、「長そうだな、面白いかな」という気持ちだったけれど、読み始めたらあっという間だった。今のところ、今年ベストだと思う。

オクトーバー・リスト:ジェフリー・ディーヴァー

ディーヴァーのミステリー。最初の章がラストで、物語は読み進んでいくうちに、時間軸をさかのぼり、知らなかった「事実」が次々に明かされてゆく。面白くないわけがない。

オリジン:ダン・ブラウン(Audible)

Audibleを利用しているが、やはり海外ミステリー小説のラインナップは少ない。
やっと探して、ダン・ブラウンの本を聴くことにした。全部で4パートに分かれているのだけれど、1パートが終わった段階で残りの3パートを一気に購入しDLした。面白くて夢中になって聴いた。毎度思うのだけれど、ナレーションが素晴らしいの。


思いのほか、長くなってしまった。最後まで読んでくれた人がいたら嬉しいです。

映画『ザ・ライダー』そして『ノマドランド』

暫く映画館には行っていなかったが、先日『ノマドランド』を観てきた。この映画について知っていたのは、家を持たずバンで放浪しながら生活する人が題材になっていて、アカデミー賞にノミネートされたらしいということと、主演がフランシス・マクドーマンドだといういうことくらい。
先月に公開されたときに、観に行こうか迷ったが、結局行かずじまいだった。最近になって監督がクロエ・ジャオだと知り、これは大きいスクリーンで観るべき、と思い直し、映画館に足を運んだ。

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ノマドランド|映画|サーチライト・ピクチャーズ

前置き

少し前、何を観ようかとサーフィンしていたとき Netflixで「あと少しで配信終了」となっていた、『ザ・ライダー』という映画を観てみた。物語は淡々と進み、BGMはほぼなく、会話も少ないが、それに余りあるリアリティ、雄大なパノラマ・ビューに引き込まれた。

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ストーリーは、頭に怪我を負ったカウボーイの青年フレディが、ロデオ復帰への捨てきれない思いと後遺症の間で葛藤しながら、自分の進む道を模索するというもの。
そしてエンドクレジットを見て気がついた。登場人物の役名と演者の名前が同じではないか。
調べてみると、この物語のモデルとなったフレディが本人として主演しているのだそう。彼の家族や友人も、本人として出演しているが、見ているときはまったく気づかなかった。これは、もう奇跡みたいな映画なのだ。それに加えて、あの空よ、、どんだけ大きいのアメリカはー。

この映画の監督・脚本を手がけたのが中国出身の新鋭クロエ・ジャオだった。そして彼女のパートナー、ジョシュア・ジェームズ・リチャーズが撮影を担当している。
この二人の新作が『ノマドランド』となる。

ノマドランド』

映画のオープニングで、ネバダ州の小さな町エンパイアについての注釈が流れる。この町は産業を中心に構築されていたが、石膏工場が閉鎖されると町全体が文字通り消えた。6か月で、町の郵便番号が削除されたというのだ。これには驚いた。

夫を亡くし、一人で暮らしていたファーン(フランシス・マクドーマンド)は、いくらかの荷物をバンに詰め込み、住み慣れた家を離れる。そして、現代のノマド遊牧民)として、アマゾンの倉庫作業員やキャンプ場の管理人など、臨時労働者として働いては、次の仕事を求めて移動する。彼女に言わせると、自分は「ホームレス」ではなくて「ハウスレス」なんだと。

同じようなバンの住人たち(主に高齢者)が情報交換するためのコミュニティがあり、ファーンは何度か立ち寄る。ここでも、前述した『ザ・ライダー』と同様のアプローチがとられている。実際の車上生活者たちが本人役として登場しているのだ。素人の中に数人の有名な俳優を配置し、物語が進行しているというわけ。

ノマドになってから、ファーンは友人の住居に住むという機会があった。また、バンの修理代を借りるため、妹の家に立ち寄ったときには、一緒に住んでほしいという申し出もあった。けれども、ファーンはそれらの提案を受け入れることができない。誰かに依存して生きていくより、過酷だけれど自活する道を選ぶ。

バンでの生活は、ファーン自ら選んだみちではなく、町がなくなるという危機的状況下の追い込まれた結果だったわけで、観ている途中、辛い気持ちになった。仲間と出会い、大自然に触れ、悪いことばかりではないのかしれない。孤独を受け入れてこその自由なのだとも思うけれど。

わたしは、作中のBGMで聴き慣れたピアノ曲がかかると、美しい映像と相まって、自分でも気づかないうちに泣いていた。ドキュメンタリーのような物語とルドヴィコ・エイナウディの音楽が心に沁みた。コロナ禍で旅行もできない今こそ、映画を観るべきかも。

海外ドラマ 『リンカーン 殺人鬼ボーン・コレクターを追え!』 感想

WOWOWで、ようやく『リンカーン』が放送された。言わずと知れたジェフリー・ディーヴァーによる人気小説リンカーン・ライム シリーズのドラマ化だ。
米国で放送されたのが昨年の1月だから、それから1年以上も開いてしまったということになる。その間、このシリーズが1シーズンでキャンセルされたというニュースを耳にした。それで、ついその理由は何なのか?という目線で見てしまうことに。
よくなーい(~_~)

以下ネタバレ含みます。

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物語は、犯人を追っているときの事故で四肢麻痺となった伝説的な科学捜査官リンカーン・ライムが、NYの難事件に挑むというもの。全10話からなり、全話通して連続殺人犯ボーン・コレクターを追い、そして各話ごとには別の事件も追う。

小説『ボーン・コレクター』は1999年に映画化もされている。ライム役はデンゼル・ワシントンアメリアはアンジェリーナ・ジョリーが演じた。当時、厳しいレビューもあったけれど、わたしはこの映画が好きだった。ライムは事故後、顔と指一本しか動かせない状態なので、当然演技も限られると思うが、デンゼル・ワシントンはうまく表現していた。彼が発作を起こし、全身が痙攣するシーンは今でも目に焼き付いている。

どういう理由からなのか、ドラマは映画に寄せたキャスティングになっていた。小説ではライムは白人で黒髪にブラウンの瞳だが、ドラマはデンゼル・ワシントンの代役のような形で『グリム』のラッセル・ホーンズビーが、アメリア役はアンジェリーナ・ジョリーに似ているアリエル・ケベルが演じている。また、ライムの介護士は小説ではハンサムなトムという青年だが、中年女性が演じているところも映画と同じだ。人種やジェンダーなどを考慮したキャスティングだということは理解できるが、やはりトム・レストンやメル・クーパーにはぜひとも会いたかった。

映画でのライムはユーモアセンスを持ち軽口をたたく一方で、実のところ安楽死を望んでいた。これはかなり小説に近いと感じた。小説ではライムは難しい性格の持ち主として描写されているが、映画では誰にでも愛されるような描き方だったと思う。しかし、ドラマのライムはとにかく硬い。独善的な口調と傲慢な態度で、障害のせいでそうなってしまったことを差し引いても好感を持ちづらい。そしてアメリアとのロマンスは皆無(これ、どうなの?)のよう。ライムは結婚し子どもがおり、アメリアには妹がいる。これはもう小説とは関係ない、別の警察ドラマと思ったほうがいいのかもしれない。

実際のところ、『CSI』や『クリミナル・マインド』を目指していたのかもしれないが、脚本のせいでチープな印象が拭えない。ライムは犯人が残したエビデンスから、次なる犯罪現場をすらすらと推測してしまう。多少のご都合主義はドラマにつきものだが、そんなに何もかもわかってしまうとはー。


期待していただけに、少々辛口になってしまったけれど、最後の10話まで鑑賞した。犯罪ドラマとしては楽しめるところもあったし、毎回工夫を凝らした犯人捜査も悪くなかった。けれど、素晴らしいソースがあったのに、それを生かせず残念だった。J・ディーヴァーはこのドラマを観たのだろうか。

2021年3月 海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説のこと

2月に続き、3月に見たドラマなどを忘れないよう書こうと思う。3月は見たいドラマが少なくて、映画やドキュメンタリーを観ることが多かった。どこにも行かず、友人と飲むこともなく、会社と自宅の往復という生活にも慣れてきた。ほしいものはほぼオンラインで入手できるが、つい不要なものまで買っていしまい反省も。

海外ドラマ

Vienna Blood/ヴィエナ・ブラッド(Hulu)

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Hulu(フールー): 人気映画、ドラマ、アニメが見放題!【お試し無料】
1906年のウィーンを舞台にしたイギリスBBC2によるのミステリードラマ。3つのパートがあり、1パートは前半と後半に分かれているので全6話となっている。
フロイトに傾倒する研修医マックスが、ウィーン警察の警部とタッグを組み、殺人事件の捜査に挑む。脚本は英ドラ『SHERLOCK』などのヒット作も手がけているスティーヴ・トンプソン。マックス役のマシュー・ビアードがカンバーバッチのように人気が出るかどうかは?だけれど・・。殺人事件は起きるも、ライトな仕上がりで、疲れたときでも気軽に見れるのがいい。シーズン2もぜひ観たい。

リンカーン 殺人鬼ボーン・コレクターを追え!(WOWOW

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ジェフリー・ディーバーの小説リンカーン・ライム シリーズのドラマ化。これは別の日記で書きたいと思う。

LAW & ORDER: 性犯罪特捜班 シーズン21(FOX/Hulu)

先月から引き続き、週一で鑑賞。第12話『警官の自殺』でエド・タッカーが登場。タッカーの引退パーティにベンソンが参加するというもの。悲しい結末に驚いたが、久しぶりにロバート・ジョン・バークが見れて嬉しかった。

映画

映画館には久しく行っていないので、動画配信サイトで鑑賞。適当にサーフィンしながら選んでいるので、古い映画も含みます。

COLD WAR あの歌、2つの心(Amazon)2018

COLD WAR あの歌、2つの心(字幕版)

COLD WAR あの歌、2つの心(字幕版)

  • 発売日: 2019/12/25
  • メディア: Prime Video
舞台はポーランド。粒子の粗い淡々とした映像が流れる最初のシーケンスを観てドキュメンタリーかと思っていたら、恋愛映画だった。1949年、歌手をめざして音楽舞踏学校のオーディションを受けた若きズーラがピアニスト、ウィクトルと出会い、2人は次第に恋に落ちる。
スターリン主義政権に悩まされているウィクトルは、自由を求め亡命。その後、15年以上に渡って二人のロマンスが描かれる。二人は(ありがちな)くっついたり離れたりを繰り返すのだけれど、白黒のスナップショットは美しく、演奏される音楽がなにもかも素晴らしい。ズーラが歌う曲がいつまでも心に残る。
監督パベウ・パブリコフスキの両親の物語がベースになっているというのだから、驚き!

ゴールデン・リバー(Netflix)2018

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映画『ゴールデン・リバー』公式サイト
何げなく見始めたら、演技派俳優4人が勢ぞろい!これはもう見るしかないでしょう。
1851年のオレゴン州。名うての殺し屋シスターズ兄弟。
兄イーライ(ジョン・C・ライリー)と弟チャーリー(ホアキン・フェニックス)は似ても似つかないキャスティングだが、設定では同じ両親から生まれた正真正銘の兄弟ということになっている。二人とも大の大人であることに間違いはないが、殺し屋の腕がいいことを除けばやることなすこと全て子どものよう。
ゴールドラッシュに沸く1851年。兄弟は黄金を探す化学式を発見したという化学者(リズ・アーメッド)を追う。先発の連絡係(ジェイク・ギレンホール)は殺すはずの化学者と意気投合。その後、4人は合流し、いつしか友情が芽生えていく。何度でも観たい。

私は、マリア・カラスAmazon)2018

私は、マリア・カラス(字幕版)

私は、マリア・カラス(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/02
  • メディア: Prime Video
マリア・カラスのドキュメンタリー自伝映画。M・カラスの貴重な舞台映像で美しい歌声を堪能した。その才能とエクゾチックな美貌で皆を虜にしたが、スター故の苦悩と孤独。早すぎる死を残念に思った。

ジャコメッティ 最後の肖像(Hulu)2018

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1964年、パリへの短い旅行中に、アメリカの作家ジェームズ・ロードはの友人である世界的に有名な芸術家アルベルト・ジャコメッティから肖像画のモデルを依頼される。ロードはジャコメッティの頼みを喜んで引き受ける(そうでしょうよ)が、すぐに終わると思われた肖像画の制作作業は、終わりが見えなくなる。実話をベースにした映画。

ロードは真っ白なシャツにネクタイを締め、誂えたスーツを着て、ウキウキ気分でジャコメッティのスタジオに向かう。しかし、ジャコメッティはロードが訪れても一向に描く気配がない。わたしならこの時点でキレそうだが、相手はアーティストである。ガマン、ガマン。
ようやく描き始めたと思ったら、ジャコメッティはロード(アーミー・ハマー)の顔を凝視し、「冷酷な顔だ、凶悪犯に見える」などと嘯く。「どこが?」と突っ込みたくなるが、当の本人ロードは、何を言われても「サンキュー」と返す。見よ、この自信よ!

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しかし、アーティストの自己不信は止まらない。納得いくものが描けない。「ファッック!」と何度も吠え、キャンバスの前で頭を抱えては苦悩する。「またなのね」「またそれなのね」と見ているほう(わたしです)も呆れて、もう笑うしかなくなってしまう。

本物の絵はこちらで見ることができます。
Christies - Alberto Giacomettis Portrait of James Lord | Christie's

ジュゼップ (Josep)(Amazon)2020

ジュゼップ (Josep)

ジュゼップ (Josep)

  • メディア: Prime Video
サムネイルの絵に惹かれて鑑賞。
1910年にバルセロナで生まれ、95年にニューヨークで没した実在の画家ジュゼップ・バルトリの人生を描いた長編アニメーション。非常に好み。

ジョーンの秘密(Amazon)2020

ジョーンの秘密(字幕版)

ジョーンの秘密(字幕版)

  • 発売日: 2020/12/16
  • メディア: Prime Video
イギリス史上最も意外なスパイとされたメリタ・ノーウッドの話しを実話を基に映画化。
80代のジョアン・スタンリーは郊外で静かな生活を送っている。ある日、英国シークレットサービスが家にやってきて反逆の罪で彼女を逮捕する。しかし、彼女は本当にそれらの犯罪を犯し、1930年代にKGBスパイとしてロシア人に英国の秘密を明かしたのか?
フラッシュバック・シーンで、若くて初心なジョアンは友人のいとこであるロシア系ユダヤ人のレオと出会い、政治的にも性的にもこのマルクス主義者に夢中になっていく。これがねー、ジョアンを誘惑するレオを演じているのがトム・ヒューズなのだ。彼以外は考えられないはまり役ではないか。

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映画『ジョーンの秘密』公式サイト

ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像(WOWOW)2020

作者の署名なき一枚の肖像画にふと目を奪われた老美術商が、人生最後の大勝負に打って出ることに。フィンランド映画

スキャンダル(WOWOW)2019

アメリカで実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動をシャーリーズ・セロンニコール・キッドマンマーゴット・ロビーの豪華共演で映画化。シャーリーズ・セロンってこんな顔だったっけ?と思って見ていたが、特殊メイクだと後で知る。
事実ベースだからか仕方ないのかかなり退屈だった。どういう人を対象に作った映画なのか。そして、あのエンディングだ。苦々しい気持ちで終了ー。見どころはカズ・ヒロのメイクだけか?

小説

ラスト・トライアル

アラバマ大学ロースクールの老教授トムを主人公にした『ザ・プロフェッサー』『黒と白のはざま』に続く第3弾。
ミステリーという点でも十分楽しめるが、このシリーズはやはり人間ドラマに重点を置いていると思う。続く4作目があるらしいので、楽しみに待ちたい。

平凡すぎる犠牲者

この本を読むために、前作『見習い警官殺し』を読み、今月はシリーズ2作目のこちらを。相変わらずのベックストレーム警部の下品さに食傷気味に。とか言いながら、続編が出たら読むよねー?

ランナウェイ: RUN AWAY

ランナウェイ: RUN AWAY (小学館文庫)

ランナウェイ: RUN AWAY (小学館文庫)

ハーラン・コーベン原作のドラマ(『SAFE 埋もれた秘密』や『その森に』など)は見ているが、小説を読むのは初。
父親が薬漬けになった娘を追う物語としてスタートし、その結末は意外なものだった。これもドラマになるでしょうか。

その他

先々月、目が疲れるので、Audible会員になったと書いたが、今では毎日聴いている。
歴史が苦手なので、歴史ものを聴いたり、ミステリーでは古典、アガサ・クリスティーや、私が海外ミステリーを好きになるきっかけになったフィリップ・マーロウ・シリーズなど。紙で買うよりは値段が高いが、先にまとめてコインを買っておきコインで購入するといい。

また、海外旅行に行けないので、以下のような本も購入。これが素敵なので紹介したい。
ウェス・アンダーソンの風景

ウェス・アンダーソンの映画に出てきそうな風景を楽しむコミュニティが、写真本を出版。左右対称でパステルカラーの印象が強いが、日本の写真もいくつか掲載されている。その中でも「東京のタクシー」と「JR」のページがいい。2つとも日本のアイコン的存在なのだと思う。各写真には文章が添えられており「JR」では「指差喚呼」について書かれている。

2021年2月 海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説のこと

1月に続き、2月に見たドラマなどを忘れないよう書こうと思う。今月は見たいと思うようなドラマが少なく、映画を観ることのほうが多かった。

海外ドラマ

LAW & ORDER: 性犯罪特捜班 シーズン21(FOX、Hulu)

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https://www.hulu.jp/law-and-order-special-victims-unit
今、毎週見ているシリーズ。6話目を見ている途中、『プリズン・ブレイク』のウェントワース・ミラーを見つけ、声をあげてしまった。様々な俳優がゲスト出演することでも有名なシリーズだが、W・ミラーは嬉しい。今なお放つハンサム・オーラにひととき酔う。新しくSVUに仲間入りした刑事カトリーナ・タミンや主任クリスチャン・ガーランド、検事補になったカリシ、すべてがいいー!

ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~(WOWOW

少し前にここに書きました。今月一楽しかったドラマ。

アブセンシア3~FBIの疑心~(WOWOW

「監禁されて6年後に救助された女性捜査官エミリーが活躍する、犯罪サスペンスドラマ」のシーズン3。最初のシーズンの感想をここに書きました。
前シーズンの結末はジョークかと思ったりもしたけれど、そうではなかったらしい。FBIに勤めている友人がいなくてもわかるような非現実的な脚本、予測可能なサスペンス。エミリーとニック(元夫)を立てるために、他の人物は無能という設定はもはや古過ぎるのでは。昔の昼メロみたいな気がして、途中で脱落。

映画

映画館には久しく行っていないので、動画配信サイトで鑑賞。適当にサーフィンしながら選んでいるので、古い映画も含みます。

この茫漠たる荒野で(Netflix)2020

www.youtube.comトム・ハンクス主演、南北戦争後のアメリカを舞台にした西部劇。
退役軍人キッドは News Readerで、町から町へと移動し、地元の人々にニュースを読み、報酬を得ている。旅の途中、キッドはジョハンナという10歳の少女と出会う。6年前に両親は殺され、ネイティブ・アメリカンに育てられたジョハンナは、英語もわからず見知らぬ外の世界に困惑していた。見かねたキッドは、彼女を親族のもとへ送り届ける役目を引き受ける。2人は厳しい自然や人間たちによってもたらされる試練に直面しながらも、荒野を進んでいく。
T・ハンクスならでは味わい深い演技、月並みだけれども大自然の厳しさと素晴らしさ。旅行に行けない昨今、せめてロード・ムービーで世界を楽しみたい。

ハングリー・ハーツ(Hulu)2014

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2014年公開の映画。ジュードとミナが出会うオープニング・シーンは、まるでラブコメのよう。結婚式のシーンに時間を使い、『ディア・ハンター』を想起させるも、そのタイミングでまさかのハンターが登場。これはミナの夢の中での話しということになるのだが。子を授かったことで、今までは見過ごしてきたことが気になってしまうミナは、流通している食物は毒として、息子には自家栽培した野菜を使った最小限の食事しか与えなくなってしまう。ミナのパラノイアに対し、何とか立ち向かおうとするジュードだったが・・。
リアリティのあるストーリーが怖いし痛い。『スター・ウォーズ』にまだ出る前の若いアダム・ドライバーの成熟した演技を堪能できたのは良かった。この映画の5年後のNetflix『マリッジ・ストーリー』(2019)のA・ドライバーもまたいい!

天国でまた会おう(Hulu・Amazon)2017

天国でまた会おう(字幕版)

天国でまた会おう(字幕版)

  • 発売日: 2019/08/02
  • メディア: Prime Video
『その女アレックス』を書いたピエール・ルメートルの小説の映画化。2015年に読んだときの感想はここに。
映画のサムネイルの写真だけでは見ようと思わなかったが、あの本の映画化だと気付き、見てみることに。戦後のパリを舞台にした人間ドラマで、テーマは重いがクスっと笑えるようなエスプリの利かせ方はやはりおフランスならでは、か。タイトルの意味するところがわかる展開は、原作と映画で異なっているが、どちからというと映画のほうが好み。

マイ・ブックショップ(Amazon)2019

マイ・ブックショップ(字幕版)

マイ・ブックショップ(字幕版)

  • 発売日: 2019/09/16
  • メディア: Prime Video
イギリスの美しい田舎町を期待して鑑賞。
1959年、イギリスの海辺の小さな町で、戦争未亡人のフローレンスは町に一軒もなかった本屋をオープンさせる。しかし保守的な町ではそれを快く思わない人も少なくなかった。ということで、地元の有力者ガマート夫人から嫌がらせを受けるというもの。映画の結末に驚いた。それ問題ありでしょう!という気持ちが残り、消化不良に。

オペレーション・フィナーレ(Netflix)2018

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史実に基づくドラマ。1960年、イスラエル諜報特務庁の諜報員たちは悪名高いナチスの戦犯アドルフ・アイヒマンを捕らえるため、アルゼンチンへ向かう。
映画『永遠の門 ゴッホの見た未来』でゴーギャンを演じたオスカー・アイザックが正統派なイメージで好演。アイヒマンの「命令に従っただけ。なぜ国を代表して罪に問われるのか」という言葉が残る。

ザ・ゴールドフィンチ(Netflix)2019

原作はピューリツァー賞受賞の小説で、アンセル・エルゴートニコール・キッドマンが競演ということで話題になったが、酷評されて失敗に終わったとされる映画。冗長で散漫と感じたが、自宅でゆっくり見る分にはいいのでは?

小説

つけ狙う者

前作から、その後が気になっていたヨーナ・リンナシリーズ最新刊。
今回はシリーズ1作目に(そして映画化にも)登場した精神科医エリックに焦点があたる。エリックは、自宅に帰ると妻が殺されていた夫の精神状態を診るため警察に協力することに。
わたしは読みながら、エリックに「なぜそれを先延ばしにする?早く警察に報告しなくちゃ」と何度も忠告したくなり、少々イライラしながら読み進めた。とは言いつつも、最後まで読ませるストーリーになっている。

最後の巡礼者

最後の巡礼者 (上) (竹書房文庫)

最後の巡礼者 (上) (竹書房文庫)

ノルウェーのミステリ大賞「リヴァートン賞」、「マウリッツ・ハンセン新人賞」、北欧でもっとも権威のあるミステリ文学賞「ガラスの鍵賞」の三冠を達成した小説。
2003年、老人の死体が自宅で発見された。その2週間前に発掘された、戦時中に殺されたとみられる三体の白骨死体に関連性を見出したトミー・バーグマン刑事は事件の真相を掴むため執拗に捜査を進める。物語は現在(2003年)と1939年~のイギリス籍ノルウェー人アグネス・ガーナーによるスパイ活動の様子が並行して進む。後半には先が読めてしまったが、バーグマン・シリーズの次作が翻訳されればまた読みたい。

見習い警官殺し

スウェーデン・ミステリの『許されざる者』の著者によるシリーズもの第一弾。最近出版されたシリーズ2番目『平凡すぎる犠牲者』を読む前にまずはこちらを読んだ。ベックストレーム警部、まさか、あなたが主人公?ゲスで無能過ぎませんか?けれども、次作を読まねば。

海外ドラマ 意外にも楽しい『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』感想

このドラマを見始めたときは、70年代のフェミニズム運動の話し?くらいの情報しか持ち合わせてなかったので、政治色が強かったり、小難しそうだったらスキップしようと思っていました。けれど、見始めたら、なんとも楽しく面白く、オープニング曲を聴くだけでノリノリな気分に。

このシリーズは、米国の男女平等憲法修正条項(ERA)をめぐって対立した1970年代の著名な人物をモデルにしたアンサンブル・ドラマになっています。なんと主人公は男女平等に強く反対するケイト・ブランシェット演ずるフィリス・シュラフリー。主人公は反対派の人なんかい?と衝撃を受けました。6人の子を持ち、“家庭で子を育てることが女性の幸せ”という信条のフィリスはERAに反対する活動を始めるんですねー。

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ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~ | ドラマ | WOWOWオンライン

まずですね、オープニングの音楽が素晴らしい!「ジャジャジャジャーン」のベートーベンの交響曲第5番「運命」のディスコ・バージョンで、ファンキーなテイクになっています。これが楽観的でエネルギッシュなこのシリーズにピッタリはまっています。

www.youtube.com

シリーズは主にフィリス・シュラフリーに焦点を当てていますが、各エピソードは新しい法律に賛成するキャラクターを紹介しています。1話目のタイトルは「フィリス」、2話目は「グロリア」3話目「シャーリー」というように。

フィリスは、どんなときでも、髪をまとめ、ちゃんと化粧をし、パステルカラーの服と上品なアクセサリーで理想的な妻・母親のイメージそのまま。どこかの誰かのように、テレワークの日や週末は朝から晩までジャージ、なんてことはあるはずもなく、いつもパーフェクトなわけ。スタイル維持のため、腹筋運動も欠かしません。

けれども、自分は”STOP ERA”の活動が忙しいので、食事や子育てはメイドや、結婚の機を逃した義姉に任せています。そんなフィリスの演説はめっぽう流暢で説得力はあるのですが、ときどき「えっ?それ本当?」みたいなことも言ってしまうので、法律家からは突っ込まれることも。少しくらいなら、誇張するためにウソをついたっていいでしょう!くらいの勢いなのだ。

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上左からアリス・マックレイ、ベラ・アプツーグ
下左からシャーリー・チザム、ベティ・フリーダン、グロリア・スタイネム
アリス以外は実在する人物で、ERA賛成の立場の女性たちです。

2話目のタイトルになっているグロリアはジャーナリストで魅力的なキャリア・ウーマンです。サングラスのつるで長い髪を挟み込み、ヒップなファッションセンスに、見た目も可愛いので若い女性の憧れでカリスマ的な存在ですが、本人はいたってマイペース。冷静でダルそうな声、額に寄った皺の表情のR・バーンが見事に演じています。

4話目はベティ・フリーダン。フェミニズムの運動の創設者ですが、「10年前に本を書いたかもしれないけれど、もう時代遅れなのよ、同性愛者や有色の女性に関する偏見ってどうなの?」などと思われています。率直さからかすぐに感情的になってしまう中年女性に冷ややかな目を向けてしまう人も多いよう。娘がいて、元夫は若い女性と結婚。久しぶりのデートに何か着ていこうかと、かつて出演したテレビのトークショーで着たドレスに手を伸ばしている様子はリアル過ぎて悲哀を感じてしまうのですが、最後のシーンではしみじみと温かい気持ちに。

8話目は、フィリスを信奉するママ友、アリスの物語です。
このエピソードは良くも悪くもドラマチック。アリスは架空の人物なので、思いきり好きなように脚本が書けたんじゃないかと・・。
タイトルは「ヒューストン」。ヒューストンで開催された全米女性会議でのこと。思うようにスピーチができず落ち込んだアリスは一人会場のバーへ。やはり一人で飲みに来た隣席の女性と話しに花が咲き、「気が楽になるわよ」と勧められた薬を飲みます。そして、サイケなセカイへ入り込んだアリスは、次第に視覚的に混乱していき、、。
気付けば、フェミニストたちの仲間に入り込み、一緒に歌っているではないですか。アリスは、今までと違った目線で物事を見るようになっていきます。


C・ブランシェットは年齢がいっても美しく、パフォーマンスは優雅で洗練されています。フィリスの胸の内を顔のアップだけで表現する様はさすがです。フィリス含め、他のキャラクターも、実際の人物によく似た俳優がキャスティングされているようです。といっても、実在する人たちを知らないわたしでも十分楽しめました。
仲間内の諍い、分裂、さらには裏切りなども描かれますが、完全な英雄的存在とか悪人とかはいません。脚本が秀逸なのだと思います。


それにしても、日本では最近、公的な人の女性蔑視の発言が問題になり、ジェンダーに対しでまだまだ後進国であることが海外に露呈してしまったということがありましたね。

2021年1月 海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説のこと

もともとこのブログは自分の備忘録として開始したんだっけ、ということで、1月に見たドラマなどを忘れないよう書こうと思う。

海外ドラマ

別日記に書いたけれども、今年はじめにAmazon経由でSTARZPLAYを見てみた。

ふつうの人々(STARZPLAY)

日記にも感想を書いたけれど、Imdbなどで高評価のアイルランドが舞台のドラマ。わたしはターゲットの年齢層から大きく外れていたようだったが、興味深く鑑賞した。

ギャング・オブ・ロンドン(STARZPLAY)

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20年にわたりロンドンで最も強い力を持つ犯罪者として君臨してきたフィン・ウォレスの死をきっかけに巻き起こる混乱を描く。
ヴァイオレンス全開、血みどろの殺戮、殺すか殺されるかの犯罪スリラー・シリーズで、映像は暗くてスタイリッシュ。今後の展開が気になり、早くシーズン2が見たい。

ダブリン殺人課(STARZPLAY)

エドガー賞をはじめ数々の文学賞を受賞し注目を浴びたタナ・フレンチのドラマ化。
デビュー作『悪意の森』と『道化の館』の2つの小説を合体したストーリーになっており、少々複雑で長いと感じた。フーダニットの部分よりも、主人公の男性刑事の過去とキャラのインパクトが強くて、そちらに目がいってしまう。とはいえ、陰湿なクライム・ドラマ好きとしては次シーズンが出たらまた見たいと思う。
2月7日からAXNミステリーでも放送予定。
ダブリン 悪意の森 | AXNミステリー

刑事モース~オックスフォード事件簿~シーズン7(WOWOW

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シーズン7(WOWOWではcase28~30)は3つのエピソードに跨るストーリーになっていたので、気を緩ませることなく観る必要があった。途中でうたた寝でもしようものなら、よくわからないことになってしまう。
今シーズンは、モースが休暇をとって行ったベネチアで出会った美しい女性とベッドインするところからスタート。まぁそんな出会いがオープニングになっているので、きっとこの女性には何かあるに違いないと思っていたら、案の定、モースの学生時代の友人の妻だった。そして、その夫婦には秘密があったという落ちに。わかりやすい。
モースはつくづく空気が読めないということが露呈したシーズンでもあった。

Lupin/ルパン (Netflix

この1つ前の日記に書いたけれど、まだ1月であっても、今年最高のドラマの1つになることは間違いない、そんな風に思える期待のドラマ。

映画

映画館には久しく行っていないので、動画配信サイトで鑑賞。適当にサーフィンしながら選んでいるので、古い映画も含みます。

15年後のラブソング(Amazon

15年後のラブソング(字幕版)

15年後のラブソング(字幕版)

  • 発売日: 2020/10/23
  • メディア: Prime Video
イギリスの人気作家ニック・ホーンビィの同名小説を実写映画化。長年一緒に暮らす腐れ縁の恋人ダンカンと平穏な毎日を送っていたアニーは、ある日、ダンカンが心酔するミュージシャンで、90年代に表舞台から姿を消した伝説のロックスターのタッカー・クロウからメールを受け取る。そして、タッカーが実際目の前に現れて、、。
アニーは米ドラマ『ダメージ』のローズ・バーン、タッカー・クロウはイーサン・ホークが演じている。髪ボサボサで冴えない中年男も、イーサン・ホークがやれば魅力的に?他の男はもう勝ち目がなくなってしまうよねー!と思いながら見た。
アニーが住んでいる家のインテリアがセンス良くて溜息もの。ダンカンの部屋も味があっていい。あぁ、こんな家に住みたい。

グッド・ネイバー(Amazon

グッド・ネイバー (字幕版)

グッド・ネイバー (字幕版)

  • メディア: Prime Video
何も期待しないで観たが、見終わった後、余韻が残った。翌日になっても、映画のシーンを思い出してはジーンと胸が熱くなるほどに。
幽霊の存在を信じ込ませようとドッキリを一人暮らしの老人にしかける若者二人。どんなドッキリにも驚かない老人には実は秘密があった的なストーリーかと思っていたが、違った。ウソの通報で老人の家を訪問した警官に「本当に女性の悲鳴が聞こえたのか」と確認する彼の姿が何度も浮かんでしまう。
ジェームズ・カーンは孤独で頑固な老人役にハマっていた。彼の妻をローラ・イネスが演じていて、『ER緊急救命室』を懐かしく思い出した。

ファミリー・クライム –ある家族の過ち–(Netflix

アルゼンチン発の実話を元にしたサスペンス映画。
豪邸に住む夫婦の一人息子が元妻をレイプしたとして告訴された。母アリシアはなんとしても息子を無罪にしたいと奔走する。しかし、後に受け入れがたい真実を知り、ある決断をする、というお話し。
調停で息子を訴えた元嫁の訴えを聞いて、さっさと息子を見限る父親に対して、母親は諦めきれないという気持ち、わからないではない。けれど、それも限界があるというもの。はじめは裕福なアリシアに対し、何の感情も持ち合わせていなかったが、彼女の人柄を知るにつれて好感が持てるように。

小説

ザリガニの鳴くところ

昨年読もうと思いながらも、なんとなく敬遠していた小説。2019年にアメリカで最も売れた本なのだそう。
今月に入り、Amazon の Audible の対象本になっているのをみつけ、すぐに購入した。最近は目が疲れて辛いので、Audibleを体験したかったのだ。
これは小説も素晴らしいが、ナレーションの池澤春菜さんが上手い!調べてみると声優さんなんですねー。
作品自体はミステリーとして読むと、腑に落ちない点もあるが、10歳から一人で生きなければならなかった「湿地の少女」カイアの成長物語として読むと感動。

レンブラントをとり返せ -ロンドン警視庁美術骨董捜査班-

表紙のデザインがレトロ過ぎて、購買意欲が削がれたりすることはないかしらと、どうでもいい心配をよそに、物語はチャンドラーならでの面白さ!
御年80歳で新シリーズとはスゴイ、わたしもまだいろんなものを諦めなくてもいいのね、などと勇気がもらえた。続編もすぐに出るということなので、楽しみ。