映画 『ショート・ターム』
短期の児童保護施設「Short Term 12」には、様々な問題を抱えた未成年の子どもたちが共同生活をしています。子どもたちの面倒を見ているのは20代中心の若いスタッフ。ここのスタッフは子どもたちを見守ることが仕事です。セラピストでも教師でもない彼らは傷ついた子どもたちに向き合い、寄り添います。
この施設で働くグレイス(ブリー・ラーソン)と、同僚でボーイフレンドのメイソン(ジョン・ギャラガー・Jr.)。二人は一緒に暮らしていて幸せそうに見えました。妊娠が発覚したグレイスはそのことをメイソンには伝えず自分で処理しようとしますが、メイソンの優しさに触れ、産むことを決意します。
そんなとき新しく入所してきた少女ジェイデン。グレイスは彼女が父親に虐待されていると気付き、いつしか過去の自分を重ねていってしまうんですね。ずっとしまってきた問題に向き合うことになり、ただ1人自分を理解し、愛してくれるメイソンにさえ心を閉ざしてしまいます。メイソンはわけがわからず、「心を開いてほしい」と必死に説得するのですが声は届きません。
とにかくメイソンがいい子過ぎて、素敵なんですけれども、そりゃやっぱり言えないよね、と思ってしまうのです。女性はメイソンみたいな人がそばにいてくれたら、と思うんじゃないかしら。
映画というよりはドキュメンタリー?と思ってしまうくらい、出演者が熱演、誰もがそのままそこにいるようでした。聡明だけれどもちょっと気難しいマーカスは18歳の誕生日を控え退所することが決まっていて、不安と焦燥感でいっぱいです。そんなマーカスをからかうトラブルメーカーのルイス、虚弱で人形遊びが好きで、ときどき施設から脱走を試みるサミー、そして自傷癖のある少女ジェイデン。
ジェイデンがタコとサメの自作童話をグレースに聞かせるときの痛々しさ、マーカスが「普通」の生活を知らない過酷な人生をラップにして歌ったときの絶望感、止めることのできない怒りの衝動で夜の通りを自転車で走るグレイスの行動。どれも忘れられません。
ホッとするようなラストも好きです。素敵な映画で、おすすめです。