misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

海外ドラマ Netflix 『ロンドン・スパイ』London Spy

BBCドラマ『ロンドン・スパイ』のことは、海外ドラマのニュースを読んで知っていました。ニュースには、脚本がトム・ロブ・スミス(『チャイルド44』の作者)、主演がベン・ウィショーとあり、過激なシーンがあるとも書いてありました。それで、Netflixで公開されたときに見ようか迷ったのですが、一人で(少なくとも1話目はそれがいいと思います)見てみることにしました。

週末に全5話を一気に鑑賞し、思いがけず心を揺さぶられました。以下ネタバレ含みます。

 

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http://www.bbc.co.uk/programmes/b06pmnwn

ベン・ウィショーが主演とくれば、彼がMI5(またはMI6)のスパイで、その活躍を描いたショーだと思うでしょう?けれども、実際には全く違っていました。これは、全く境遇の異なる2人が出会うラブ・ストーリーといった感じでした。スパイ・ドラマだと思って期待すると、肩透かしを食らうかもしれません。

 

ベン・ウィショー演じるダニーは、クラブ通いをしている、倉庫で働くブルーカラーです。ダニーは、早朝にジョギングをしているミステリアスでハンサムなアレックス(エドワード・ホルクロフト)に出会います。

アレックスは投資銀行員で、数学の天才として15歳で大学に入り、ずっと他の皆とは少しだけ足並みが揃わずにきました。長く無視されてきた欲求は、彼と共存しているようでした。これは、同じ英国のアラン・チューリングを連想させますね。実際、寡黙なアレックスがいったんしゃべると、ホルクロフトの低い声とその話し方で、彼が数学者であることを想起させます。

他人は自分を不快な目で見ると語るアレックスは、数字だけでなく、他人の気持ちを読むことも得意でした。そんな彼が、脆弱でもあるけれど純真なダニーに好意を持ったのはわかる気がします。

彼らの関係が続いた(後にその期間が8ヶ月だとわかります)ある日、アレックスは失踪します。ダニーは失意のどん底で、年上の友人スコッティ(ジム・ブロートベント)に助けを求めます。私にはスコッティのような、元スパイの友人はいないので、ただ一人アレックスがいなくなった喪失感に包まれました。

彼がいなくなってから、様々な事実が明るみになります。彼はMI6のスパイだったこと(そう、ベン・ウィショーではなくて、ホルクロフトが)。死亡したと言っていた両親は実は生きていること、など。

そして、ダニーは、彼の謎を追うことになります。

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最後のフラッシュバック・シーンで、アレックスの(信じ難い)終焉を知り、胸が締め付けられました。ホルクロフトの演技があまりにリアルだったので、見終わったあと、幾度となくこのシーンを思い出しては、アレックスのことを考え(何やってるんでしょう、私は)悲痛な気持ちになりました。

男性の同性愛がテーマの1つになっている(だって、トム・ロブ・スミスベン・ウィショー、それに加えてマーク・ゲイティスですよ)のかもしれませんが、私にはどうでもいいように思えました。そもそもアレックスはゲイだったのでしょうか。「異物」扱いされてきた彼が、たまたま出会った心を許せる相手が、たまたま同性だっただけのようにも思えてきます。

 

スパイものとしてみるならば、理解しづらいアルゴリズムもありました。ダニーがシリンダーを持っていたことを「彼ら」はどうやって知り得たのか。また、情報をリークするのは郵便で?ネットにアップロードすればいいだけでは。

もっと言ってしまうと、アレックスの研究はそんなに危険なものでしたか。そのことで彼を排除する必要はありましたか。
-まぁ、このことは、深く考えないようにしましょう。

 

キャストは素晴らしかったです。シャーロット・ランプリング(現在、主演映画『さざなみ』がロードショー中)は孤独で中毒な母親として傑出していました。そして、このドラマを牽引したB・ウィショーもまた、良かったです。彼のためのドラマだったように思います。

脇役もゴージャスです。 スコッティの友人にハリエット・ウォルター(LAW & ORDER: UK)、ダニーの旧友にマーク・ゲイティス(SHERLOCK)、エイドリアン・レスター、デヴィッド・ハイマン、ジェームズ・フォックスなどなど。ワンショットだけの人もいるんですから、驚きです。

 

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