misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

海外ドラマ 意外にも楽しい『ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~』感想

このドラマを見始めたときは、70年代のフェミニズム運動の話し?くらいの情報しか持ち合わせてなかったので、政治色が強かったり、小難しそうだったらスキップしようと思っていました。けれど、見始めたら、なんとも楽しく面白く、オープニング曲を聴くだけでノリノリな気分に。

このシリーズは、米国の男女平等憲法修正条項(ERA)をめぐって対立した1970年代の著名な人物をモデルにしたアンサンブル・ドラマになっています。なんと主人公は男女平等に強く反対するケイト・ブランシェット演ずるフィリス・シュラフリー。主人公は反対派の人なんかい?と衝撃を受けました。6人の子を持ち、“家庭で子を育てることが女性の幸せ”という信条のフィリスはERAに反対する活動を始めるんですねー。

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ミセス・アメリカ~時代に挑んだ女たち~ | ドラマ | WOWOWオンライン

まずですね、オープニングの音楽が素晴らしい!「ジャジャジャジャーン」のベートーベンの交響曲第5番「運命」のディスコ・バージョンで、ファンキーなテイクになっています。これが楽観的でエネルギッシュなこのシリーズにピッタリはまっています。

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シリーズは主にフィリス・シュラフリーに焦点を当てていますが、各エピソードは新しい法律に賛成するキャラクターを紹介しています。1話目のタイトルは「フィリス」、2話目は「グロリア」3話目「シャーリー」というように。

フィリスは、どんなときでも、髪をまとめ、ちゃんと化粧をし、パステルカラーの服と上品なアクセサリーで理想的な妻・母親のイメージそのまま。どこかの誰かのように、テレワークの日や週末は朝から晩までジャージ、なんてことはあるはずもなく、いつもパーフェクトなわけ。スタイル維持のため、腹筋運動も欠かしません。

けれども、自分は”STOP ERA”の活動が忙しいので、食事や子育てはメイドや、結婚の機を逃した義姉に任せています。そんなフィリスの演説はめっぽう流暢で説得力はあるのですが、ときどき「えっ?それ本当?」みたいなことも言ってしまうので、法律家からは突っ込まれることも。少しくらいなら、誇張するためにウソをついたっていいでしょう!くらいの勢いなのだ。

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上左からアリス・マックレイ、ベラ・アプツーグ
下左からシャーリー・チザム、ベティ・フリーダン、グロリア・スタイネム
アリス以外は実在する人物で、ERA賛成の立場の女性たちです。

2話目のタイトルになっているグロリアはジャーナリストで魅力的なキャリア・ウーマンです。サングラスのつるで長い髪を挟み込み、ヒップなファッションセンスに、見た目も可愛いので若い女性の憧れでカリスマ的な存在ですが、本人はいたってマイペース。冷静でダルそうな声、額に寄った皺の表情のR・バーンが見事に演じています。

4話目はベティ・フリーダン。フェミニズムの運動の創設者ですが、「10年前に本を書いたかもしれないけれど、もう時代遅れなのよ、同性愛者や有色の女性に関する偏見ってどうなの?」などと思われています。率直さからかすぐに感情的になってしまう中年女性に冷ややかな目を向けてしまう人も多いよう。娘がいて、元夫は若い女性と結婚。久しぶりのデートに何か着ていこうかと、かつて出演したテレビのトークショーで着たドレスに手を伸ばしている様子はリアル過ぎて悲哀を感じてしまうのですが、最後のシーンではしみじみと温かい気持ちに。

8話目は、フィリスを信奉するママ友、アリスの物語です。
このエピソードは良くも悪くもドラマチック。アリスは架空の人物なので、思いきり好きなように脚本が書けたんじゃないかと・・。
タイトルは「ヒューストン」。ヒューストンで開催された全米女性会議でのこと。思うようにスピーチができず落ち込んだアリスは一人会場のバーへ。やはり一人で飲みに来た隣席の女性と話しに花が咲き、「気が楽になるわよ」と勧められた薬を飲みます。そして、サイケなセカイへ入り込んだアリスは、次第に視覚的に混乱していき、、。
気付けば、フェミニストたちの仲間に入り込み、一緒に歌っているではないですか。アリスは、今までと違った目線で物事を見るようになっていきます。


C・ブランシェットは年齢がいっても美しく、パフォーマンスは優雅で洗練されています。フィリスの胸の内を顔のアップだけで表現する様はさすがです。フィリス含め、他のキャラクターも、実際の人物によく似た俳優がキャスティングされているようです。といっても、実在する人たちを知らないわたしでも十分楽しめました。
仲間内の諍い、分裂、さらには裏切りなども描かれますが、完全な英雄的存在とか悪人とかはいません。脚本が秀逸なのだと思います。


それにしても、日本では最近、公的な人の女性蔑視の発言が問題になり、ジェンダーに対しでまだまだ後進国であることが海外に露呈してしまったということがありましたね。