海外ドラマ 『リンカーン 殺人鬼ボーン・コレクターを追え!』 感想
WOWOWで、ようやく『リンカーン』が放送された。言わずと知れたジェフリー・ディーヴァーによる人気小説リンカーン・ライム シリーズのドラマ化だ。
米国で放送されたのが昨年の1月だから、それから1年以上も開いてしまったということになる。その間、このシリーズが1シーズンでキャンセルされたというニュースを耳にした。それで、ついその理由は何なのか?という目線で見てしまうことに。
よくなーい(~_~)
以下ネタバレ含みます。
物語は、犯人を追っているときの事故で四肢麻痺となった伝説的な科学捜査官リンカーン・ライムが、NYの難事件に挑むというもの。全10話からなり、全話通して連続殺人犯ボーン・コレクターを追い、そして各話ごとには別の事件も追う。
小説『ボーン・コレクター』は1999年に映画化もされている。ライム役はデンゼル・ワシントン、アメリアはアンジェリーナ・ジョリーが演じた。当時、厳しいレビューもあったけれど、わたしはこの映画が好きだった。ライムは事故後、顔と指一本しか動かせない状態なので、当然演技も限られると思うが、デンゼル・ワシントンはうまく表現していた。彼が発作を起こし、全身が痙攣するシーンは今でも目に焼き付いている。
どういう理由からなのか、ドラマは映画に寄せたキャスティングになっていた。小説ではライムは白人で黒髪にブラウンの瞳だが、ドラマはデンゼル・ワシントンの代役のような形で『グリム』のラッセル・ホーンズビーが、アメリア役はアンジェリーナ・ジョリーに似ているアリエル・ケベルが演じている。また、ライムの介護士は小説ではハンサムなトムという青年だが、中年女性が演じているところも映画と同じだ。人種やジェンダーなどを考慮したキャスティングだということは理解できるが、やはりトム・レストンやメル・クーパーにはぜひとも会いたかった。
映画でのライムはユーモアセンスを持ち軽口をたたく一方で、実のところ安楽死を望んでいた。これはかなり小説に近いと感じた。小説ではライムは難しい性格の持ち主として描写されているが、映画では誰にでも愛されるような描き方だったと思う。しかし、ドラマのライムはとにかく硬い。独善的な口調と傲慢な態度で、障害のせいでそうなってしまったことを差し引いても好感を持ちづらい。そしてアメリアとのロマンスは皆無(これ、どうなの?)のよう。ライムは結婚し子どもがおり、アメリアには妹がいる。これはもう小説とは関係ない、別の警察ドラマと思ったほうがいいのかもしれない。
実際のところ、『CSI』や『クリミナル・マインド』を目指していたのかもしれないが、脚本のせいでチープな印象が拭えない。ライムは犯人が残したエビデンスから、次なる犯罪現場をすらすらと推測してしまう。多少のご都合主義はドラマにつきものだが、そんなに何もかもわかってしまうとはー。
期待していただけに、少々辛口になってしまったけれど、最後の10話まで鑑賞した。犯罪ドラマとしては楽しめるところもあったし、毎回工夫を凝らした犯人捜査も悪くなかった。けれど、素晴らしいソースがあったのに、それを生かせず残念だった。J・ディーヴァーはこのドラマを観たのだろうか。