misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

映画『ザ・ライダー』そして『ノマドランド』

暫く映画館には行っていなかったが、先日『ノマドランド』を観てきた。この映画について知っていたのは、家を持たずバンで放浪しながら生活する人が題材になっていて、アカデミー賞にノミネートされたらしいということと、主演がフランシス・マクドーマンドだといういうことくらい。
先月に公開されたときに、観に行こうか迷ったが、結局行かずじまいだった。最近になって監督がクロエ・ジャオだと知り、これは大きいスクリーンで観るべき、と思い直し、映画館に足を運んだ。

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ノマドランド|映画|サーチライト・ピクチャーズ

前置き

少し前、何を観ようかとサーフィンしていたとき Netflixで「あと少しで配信終了」となっていた、『ザ・ライダー』という映画を観てみた。物語は淡々と進み、BGMはほぼなく、会話も少ないが、それに余りあるリアリティ、雄大なパノラマ・ビューに引き込まれた。

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ストーリーは、頭に怪我を負ったカウボーイの青年フレディが、ロデオ復帰への捨てきれない思いと後遺症の間で葛藤しながら、自分の進む道を模索するというもの。
そしてエンドクレジットを見て気がついた。登場人物の役名と演者の名前が同じではないか。
調べてみると、この物語のモデルとなったフレディが本人として主演しているのだそう。彼の家族や友人も、本人として出演しているが、見ているときはまったく気づかなかった。これは、もう奇跡みたいな映画なのだ。それに加えて、あの空よ、、どんだけ大きいのアメリカはー。

この映画の監督・脚本を手がけたのが中国出身の新鋭クロエ・ジャオだった。そして彼女のパートナー、ジョシュア・ジェームズ・リチャーズが撮影を担当している。
この二人の新作が『ノマドランド』となる。

ノマドランド』

映画のオープニングで、ネバダ州の小さな町エンパイアについての注釈が流れる。この町は産業を中心に構築されていたが、石膏工場が閉鎖されると町全体が文字通り消えた。6か月で、町の郵便番号が削除されたというのだ。これには驚いた。

夫を亡くし、一人で暮らしていたファーン(フランシス・マクドーマンド)は、いくらかの荷物をバンに詰め込み、住み慣れた家を離れる。そして、現代のノマド遊牧民)として、アマゾンの倉庫作業員やキャンプ場の管理人など、臨時労働者として働いては、次の仕事を求めて移動する。彼女に言わせると、自分は「ホームレス」ではなくて「ハウスレス」なんだと。

同じようなバンの住人たち(主に高齢者)が情報交換するためのコミュニティがあり、ファーンは何度か立ち寄る。ここでも、前述した『ザ・ライダー』と同様のアプローチがとられている。実際の車上生活者たちが本人役として登場しているのだ。素人の中に数人の有名な俳優を配置し、物語が進行しているというわけ。

ノマドになってから、ファーンは友人の住居に住むという機会があった。また、バンの修理代を借りるため、妹の家に立ち寄ったときには、一緒に住んでほしいという申し出もあった。けれども、ファーンはそれらの提案を受け入れることができない。誰かに依存して生きていくより、過酷だけれど自活する道を選ぶ。

バンでの生活は、ファーン自ら選んだみちではなく、町がなくなるという危機的状況下の追い込まれた結果だったわけで、観ている途中、辛い気持ちになった。仲間と出会い、大自然に触れ、悪いことばかりではないのかしれない。孤独を受け入れてこその自由なのだとも思うけれど。

わたしは、作中のBGMで聴き慣れたピアノ曲がかかると、美しい映像と相まって、自分でも気づかないうちに泣いていた。ドキュメンタリーのような物語とルドヴィコ・エイナウディの音楽が心に沁みた。コロナ禍で旅行もできない今こそ、映画を観るべきかも。