『闇からの贈り物』V.M.ジャンバンコ

シアトル郊外で子ども2人を含むシンクレア一家が惨殺される事件が起きます。刑事アリス・マディソンはパートナーのブラウン刑事と事件を追いますが、捜査は難航を極めます。

主人公マディソンは、1ヶ月ほど前に殺人課に配属されたばかり。独身で、酒はほとんど飲まず、煙草は吸わず、同僚の警官の集まりにはたまに顔は出しても大抵は人づきあいを避けているような女性です。マディソンのことをニューヒロインと紹介しているものがありましたが、ヒロインという言葉が似合わないくらい、女性を意識するような描写はほとんどありません。自身も女性であることを自覚していないのではないかと思うくらいです。彼女は1人の刑事として、どこまでもプロに徹します。

やがて捜査線上に容疑者として浮上したキャメロンは、彼の弁護士クイン、被害者と悲惨な過去を共有していました。現在からフラッシュバックし、彼らの過去が明らかになってゆきます。彼らは多くを語らず、優しさや悲哀はさざ波を立てていますが、それを表に出すことはありません。それでも、マディソンのフィルターを通して知る、彼らのちょっとした動きや仕草、少ない言葉の端からその心中を推し量って心打たれます。

物語は意外にも、初期の段階で犯人が誰なのかわかってしまいます。つまり、この小説はホワイダニットが焦点となり、事件周辺の人間模様にページを割いています。犯人はマディソンの声を青藍色、過去の事件に関わった男の声を暗灰色だと感じます。果たして犯人の目的は何なのか、逮捕することはできるのでしょうか。

 

この小説は著者のデビュー作品だというのだから驚きです。上下巻あって長いですが、私はのめり込んで読みました。これはシリーズとなり、既に3作目まで書かれているそうなので、続編を楽しみにしています。

闇からの贈り物 上 (集英社文庫)

闇からの贈り物 上 (集英社文庫)

 
闇からの贈り物 下 (集英社文庫)

闇からの贈り物 下 (集英社文庫)