映画『ルーム』(ネタバレ)
2015年にカナダとアイルランドで製作されたドラマ映画です。エマ・ドナヒューの小説が原作になっています。主人公ジョイ役を務めるブリー・ラーソンは、『ショート・ターム』で注目を集めた女優さんです。『ルーム』でもその勢いは止まらず、第73回ゴールデングローブ賞、第88回アカデミー賞で主演女優賞を受賞したのがまだ記憶に新しいです。以下、ネタバレ含みます。
映画は、穏やかにスタートを切ります。ジャック(ジェイコブ・トランブレイ)とその母親(ブリー・ラーソン)は、限られてはいるけれども、居ごこちが良さそうなスペースにいることがわかります。実際のところ、母とジャックの人生が誰に支配されているのか、わたしたちが知るのは、もう少し先になります。
母親は、自分自身と子どもが生き残るため、ルーチンワークを作ります。ゲーム感覚の運動、読み聞かせ、工作、そしてビタミン剤を摂取することにこだわります。ジャックは、部屋の中だけがリアルで、部屋の外は虚構だと教わっています。母親は子どもを守ることだけに集中しているようでした。
子どもが5歳になったことをきっかけに、母は脱出計画はたてます。その実行はスリリングでハラハラし通しでした。犬を散歩させていた男性の勇気に、女性パトロール警官のプロフェッショナルな仕事ぶりに、誰もが拍手を送りたくなったに違いありません。
母親役のブリー・ラーソンは過酷な状況で息子を育てるという難しい役をこなし、非の打ち所がありません。そして、その子役にはジェイコブ・トランブレイ、本当に可愛らしいです。また、ラーソンの母親のジョーン・アレン、彼女のパートナーのトム・マッカムスらも、ひけをとらない演技で本作を支えます。
ジョーン・アレンがすごくいいんですね。戸惑いつつも現実を受け入れ、娘と孫を支えようとする凛とした姿は、非常にリアリティがありました。ジャックが髪を切ってもらうシーンで、おばあちゃんに言う(普通なら本当に何気ない)言葉がどんなに嬉しかったことか。
過度な演出はほとんどなく、どちらかというと物語は淡々と進みます。彼らを支配してきた「ルーム」から抜け出たことは、そのまま彼らを救うことにはなりませんでした。むしろ、「ルーム」にいたときには感じなかった様々な苦しみを生むことにもなりました。「なぜ私がこんな目に合わなくてはならなかったの」という声にならない悲痛な叫びがこだまします。
ブリー・ラーソン主演映画『ショート・ターム』の感想はこちら。