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海外ドラマ Hulu『The Knick/ザ・ニック』

以前の記事で、アメドラの『The Knick』が見たいと書いたのですが、遅まきながらHuluで見れると知りました。

このドラマの舞台になるのは、1900年代のNY、ニッカボッカ病院です。この病院は「ニック」と呼ばれています(「ニック」は人の名前ではなかったんですね)。ここで働く革新的な医療を進める天才外科医ジョン・サッカリーをクライブ・オーウェンが熱演しています。

スティーブン・ソダーバーグが監督をしていて、その映像はビンテージ写真のようにセピア色で美しいです。建物、家具、小物や登場人物のファッションに至るまで、すべてにこだわりが感じられます。1シーズンは10エピソードで構成、以下ネタバレ含みます。 

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http://www.cinemax.com/the-knick/

 

確かにスタイリッシュな映像は素晴らしく、手術のシーンも凝っていて(グロテスクともいいます、血が苦手な人には不向きでしょうね)目を見張るものが多くありました。が、ストーリーラインは最初、これといって面白くなかったです。これは私が勝手に、『Dr.House』のような医療ものだと思いこんでいたせいもあります。けれども、ガマンが必要なのは少しだけ。シーズンの途中からは加速して面白くなっていきます。あの控えめなBGMも、今では大好きに。

 

最初につまらないと思ったのには理由があります。主役のサッカリーに共感できなかったからです。彼は、不愛想で自滅的、そして性差別と人種差別主義者です。この時代の白人にとって、後者は当たり前だったのかもしれませんが。よく見かけるアンチ・ヒーローとは言い難いです。

意欲的な新入り、アルジャーノン・エドワーズ医師を、サッカリーは彼が黒人だという理由だけで拒絶します。差別で手術をさせてもらえないエドワーズは、地下でこっそり病気や怪我を負った黒人たちを診るようになります。が、白人のサッカリーがダメ人間で、黒人のエドワーズが清廉潔白というような、ありきたりな描き方にはなっていません。

サッカリーは薬物にどっぷり依存(彼のモデルになっている実在する医師はコカインとモルヒネ中毒だったらしいですけれど)しています。ですが、結局のところ、彼は患者を救いたい、医療をもっと良くしたいと思っています。自らに薬を打っては、寝食を忘れて実験に没頭します。そう、彼のプライオリティは常に研究にあるようでした。彼が発見するものが、今後多くの人々を救うのだとしたら、わたしたちは彼に感謝することになるでしょう。

試行錯誤の時代なので、ある意味、手術台に乗った患者はそのまま実験台になるわけです。ドラマで描かれる手術はどこまでがフィクションで、どこからが真実なのかは、私にはわかりませんでした。大学の講堂のようなところで、観衆に囲まれて行われる手術。梅毒で鼻を失った女性に腕からそのまま皮膚を移植したり、別の少女には、執刀しているサッカリーの腕から直接患者に輸血したりと、「それあり?」という驚きの連続です。

つまるところ、この時代は生き長らえるのが困難だったということは間違いありません。 ペニシリンが発見されるまでは、あと何十年も待たねばならないでしょう。移民の間で結核が流行ると、隔離することしかできなかったでしょう。また腸チフスや梅毒など、この時代には救えなかった病気がどれほどあったでしょうか。