ゴシック小説(1) 『フランケンシュタイン』メアリー シェリー
先月くらいからAXNミステリーで放送している、海外ドラマ『ペニー・ドレッドフル ~ナイトメア 血塗られた秘密~ 』を見ています。いつもならタイトルで敬遠してしまいそうですが、録画してあったので見てみました。
何の前知識もなく見たのですが、作中にヴィクター・フランケンシュタインが登場しました。私にとってフランケンシュタインは映画に登場するあの頭の大きいつぎはぎだらけの怪物のイメージだったのですが、どうも人造人間を創り上げた博士の名前らしいということがわかりました。
改めてAXNミステリーのドラマページを見てみると、英の小説家メアリー・シェリーの小説から誕生したフランケンシュタイン博士、彼が創造したクリーチャー、文豪オスカー・ワイルドが生んだ美青年ドリアン・グレイ、ブラム・ストーカーの「ドラキュラ」からヴァン・ヘルシングなど、歴代のゴシック小説に登場人(怪)物たちが一堂に会す、19世紀末のロンドンを舞台に展開するゴシック・ミステリーだと書いてありました。
それでゴシック小説について調べてみました。大体はこんな感じ。18世紀末から19世紀初頭にかけて書かれた恐怖小説で、多くの場合ゴシック風(中世風)の建物を舞台の一部とし、超自然的な怪奇現象を描く小説。私も吸血鬼、人狼、フランケンシュタインという、3つのステレオタイプは知っていたつもりでしたが、原作はどれも読んだことがありませんでした。
それで今回初めて『フランケンシュタイン』を読んでみました。いろいろな出版社から翻訳されていますが、私が読んだのは以下のものです。確かに表紙の絵はおどろおどろしい感じです。
前置きが長くなりましたが、実際に本を読んでみたら、これが想像していたものとはかなり違っていました。フランケンシュタインによって造られた「怪物」は、名前すらつけてもらえず、その醜い容姿から誰にも愛されることはありませんでした。彼の痛いほどの孤独が心に染み入りました。
彼は自分の創造主であるヴィクターに執着し、やっとのことで探し出した際に自分の心情を吐露します。彼は言います。 「どうすれば、おまえの心を動かせるんだ?こうして頼んでいるのに、おまえがその手で創り出したものが、おまえの善意と哀れみを乞ういているというのに、優しい眼は向けてはくれぬのか。」
ヴィクターはようやく彼の話しに耳を傾け、そして知ります。彼がどうやって昼夜の区別がつくようになったのか。飲み物を与えてくれる澄んだせせらぎを知り、小鳥の鳴き声を聞いては嬉しくなり、うまくはいかなかったけれどその歌声を真似たりしていたことを。
彼は小さな小屋を見つけて住んでいました。その小屋の窓から隣の母屋を覗き、そこにいる家族から様々なことを学習していきました。老人と若い娘がお互いを思い、心通わせる様子を見ていたとき、彼は耐えられなくなりそっと窓から離れます。そのときの老人を見て 「その笑みのなんと優しく慈愛のこもっていたことか。それを見たとたん、おれはなんとも言いようのない不思議な気持ちになり、圧倒されてしまった。苦しみと歓びが入り混じっていて、そんな気持ちになったのは初めてだった。」と語り、そのときに自分の激しい感情に耐えられなくなったというのです。
またある日、道で拾った書物を持ち帰り、それらの本を読みふけります。『若きウェルテルの悩み』のウェルテルの想像力からは失意と憂鬱を学び、『ブルターク英雄伝』からは崇高な思想を叩き込まれたといいます。
母屋は彼にとって唯一人間を学んだ学校だったのですが、彼は読書を通じても様々なことを学習し、人間というものを知ります。そんな人並み以上の知性を持ち、豊かな感受性を備えた彼であったのに、ヴィクターは最後まで受け入れることができませんでした。
ーまさか、こんな物語だったとは、全く知りませんでした。このあとも物語は続きます。そして彼らに待ち受けていたラストは哀しいものでした。
NHKの番組『100分de名著』という番組で1年ほど前に取り上げられていました。早速アマゾンで買って読んでみました。
メアリ・シェリー『フランケンシュタイン』 2015年2月 (100分 de 名著)
- 作者: 廣野由美子
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2015/01/26
- メディア: ムック
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この本は『フランケンシュタイン』のダイジェスト版で、こちらだけ読むのでもOKと思います。要約だけでなく、著者の人間関係やこの物語が創られた背景など興味深い内容にも触れています。
私はこの本を通して『100分de名著』というNHK Eテレの番組を知りました。古今東西の名著にスポットライトをあて、その作品をわかりやすく、かつ楽しく解説してくれます。今は毎週見ています。今月はアドラーの『人生の意味の心理学』を放送しています。
NHKのサイトはこちら。
100分 de 名著
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