misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』感想

シリーズ最新作『007/ノー・タイム・トゥ・ダイン』が、『007 スペクター』から6年の時を経て、10月1日より日本で公開されました。前作からもう6年も経っていたんですねー。

ダニエル・クレイグジェームズ・ボンド、最後にして集大成となっている映画です。もうたくさんの人がレビューを書いているでしょうけれど、わたしも少しだけ書きたいと思います。

以下ネタバレ含みます。

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The Official James Bond 007 Website | No Time To Die JP

本作品の脚本・監督はキャリー・ジョージ・フクナガが担当しています。前二作がサム・メンデスだったので、彼のプレッシャーは相当なものだったに違いありません。
しかし、それをはねのけ素晴らしい作品になっていたと思います。映像の切り取り方や色使い、すべて綿密に計算されていたように感じました。そして日本要素がふんだんに取り込まれていたのも、フクナガ監督ならではでしょう。

わたしは映画が公開された翌日10/2(土)に映画館に行きました。その日は台風一過で10月とは思えぬ猛暑だったこともあり、後先も考えず映画館に着いた途端、アイスコーヒーをガブ飲みし、案の定、途中トイレに行きたくなり離席するはめに。もちろん、急いで席に戻り最後まで見ましたが、やはり気になって翌週も観に行きました。

強い女性たち

オープニングで、ジェームズとマドレーヌが訪れたのは、南イタリアのマテーラ。いつかは行ってみたいと思っていた街です。ここにジェームズがかつて愛したヴェスパーのお墓があったんですね。ジェームズが一人で墓参りに行き、墓前で自然と出た言葉は ”I miss you.” でした。

ジェームズ・ボンドの「すぐに戻るよ」ほど当てにならないものはないですが、その後の怒涛の展開、アクションに釘付けに。クルマのことはほぼわからない私でも、あらゆるガジェットを使ってのアクションシーンはもう素晴らしくて。

スペクターのエージェントらが自分を暗殺しようとしたのは、マドレーヌがスペクターと内通していたせいだと思い込んだボンドは、マドレーヌの必死の無実の声には耳を貸さずにマドレーヌを電車に乗せ、もう二度と会うことはないと告げます。突然の別れにマドレーヌは困惑し、電車から離れてゆくボンドを目で追いながら、手を自分のお腹に当てていました。

マドレーヌはボンドがヴェスパーと決別できたら、自分の過去を洗いざらい告白し、妊娠したことを伝えたかったのではないでしょうか。

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わたしは、マドレーヌと別れたボンドがジャマイカで穏やかな隠居生活をしている束の間の映像が好きです。彼のボートも住まいもボンドらしさが溢れ、溜息が出るほどの美しさに酔いしれました。

ボンドはCIAの友人フェリックスに協力を頼まれて、キューバで行われるスペクターのパーティーに乗り込むことになります。そこに彗星のごとく現れたのは、CIA諜報員のパロマ

美しさと可愛らしさを兼ね備え、その華奢な身体からは想像できないくらい強い。パロマのボンドに対する接し方は、まるで取引相手の担当者に接するビジネスマンのようでもあり、現代らしくて良かったです。どんな女性もボンドの前では「女」になってしまうと新007のノーミが愚痴っていましたが、パルマはボンドのモテ男ぶりをよそに、自分の仕事だけに集中し、任務が完了したあとは「わたしはここまで、お疲れ様でしたー!」と、引き際もあっぱれなんですよねー。

それにしても、あの胸の開いたドレスとヒールサンダルで戦うのは大変なことだったでしょう。

ボンドガールではないけれど、ほかにも強い女性が登場します。新しい007のノーミです。007になったことからもわかる通り、プロ意識もスキルも高い(そして少々態度も大きい)諜報員です。彼女もボンドのことは、007という「ただの数字」をめぐって、気になる存在であるものの、男性としての関心は持っていません。

ジェームズが自分の古巣MI6のオフィスに入るときにゲストカードが必要だったり、ボンドが007に復帰すると、ノーミは「自分は00何になるの?」とMになんども確認したり、マニペニーとの会話で「ボンドを撃ったんですってね」「一度は撃ちたくなるのよ」など、クスっと笑えるシーンもあって楽しかったです。誰がMの部屋に入れるか、入れないのかを気にするのも、さもありなんという感じで、笑いました。

悪役について

前作に続いて、悪の親玉、ブロフェルドが登場しました。彼は捕らえられて監獄に入っていたのですね。ボンドとブロフェルドの再開シーンはハンニバル・レクターを想起させました。彼はそこで、意図せずボンドに殺されてしまいます。

わたしは、ブロフェルドはジェームズの義兄と思っていたのですが、ブロフェルドの家族がジェームズを養子に迎えたということで、ブロフェルドとは血のつながりがなかったのですね。そうでなければ、ボンドも死んでしまったことでしょう。

ブロフェルドを殺した黒幕はサフィンでした。サフィンは自分の家族を殺したスペクターの一味をすべて抹消した後、彼の島の基地で、より多くのナノボットを作り、大量破壊兵器として使いたい(売却したい)と考えていました。

サフィンは今までの強力な悪役とは違い、控えめで礼儀正しくどこか不気味な印象でした。まさにラミ・マレックのために用意されたキャラクターだったのでは?

マドレーヌと娘マチルダが、サフィンに捕らえられますが、サフィンは最初からマチルダのことは殺すつもりはなかったように思います。過去にマドレーヌを殺せなかったのと同じ理由で。

ジェームズ・ボンド

ダニエル・クレイグが主演するようになってからの007のフランチャイズは、今までのシリーズとは一線を画したと思っています。シリアス路線になり、感傷的で美しい映像の作品として、わたしの中でもお気に入りのシリーズとなりました。

今作でクレイグが引退することは知っていましたが、映画のタイトルに逆らい、あのエンディングは想像していませんでした。クレイグのジェームズ・ボンドが本当に最後なのだと実感させられて、しばらくは喪失感で胸がいっぱいになりました。


Amazon Primeで『ジェームズ・ボンドとして』を、今日発見して観ました。

クレイグがジェームズ・ボンドとしての15年間の軌跡を振り返っています。彼が次のボンドに決まったときに受けたバッシングがどれほどひどかったのか、怪我を押して撮影をこなしていたことなどが明かされています。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の撮了直後の映像では、チームの皆に感謝の言葉を述べて感極まる彼の様子に感動しました。
最初から最後までダニエル・クレイグを満喫できる、夢のような50分です。


今はまだ次のボンドのことを考えられませんが、わたしとしてはあまりメジャーではない俳優がボンドの役をつかみ、ボンドとして魅力を発揮してほしい気がします。ダニエル・クレイグみたいに。


#はじめに「少しだけ」と書いたのに、なんだかんだ書いてしまいました。読んでもらえたら嬉しいです。