misasa104の海外ドラマ日記

海外ドラマ(ごくたまに海外ミステリ小説)について忘れないように書いています。

海外ドラマ 2021の幕開けにふさわしい Netflix『LUPIN / ルパン』 Part 1

Netflixのオープニング動画で『最強の二人』『あしたは最高のはじまり』のオマール・シーを見つけ、すぐに見てみました。あとで調べてみたら、“怪盗ルパン”の生みの親、仏作家モーリス・ルブランによる『アルセーヌ・ルパンシリーズ』にインスパイアされたNetflixの新シリーズということでした。

イギリスが名探偵「シャーロック・ホームズ」なら、フランスは変装の達人、怪盗紳士「アルセーヌ・ルパン」でしょう?両者は幾度となく映画化されていて、日本ではルパンというと、アニメの『ルパン三世』を思い浮かべる人が多いのはないでしょうか?

全部で10話だそうで、現在はPART1として前半の5話のみが配信されています。

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Lupin/ルパン | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

主人公はオマール・シー演ずるアサン・ディオプ。アサンの父親はセネガルからの移民で、裕福で権力もあるヒューバート・ペレグリーニのドライバーをしていたが、ある日、ペレグリーニ家にあるマリー・アントワネットがかつて所有していたというネックレスの盗難容疑で逮捕されると、その後刑務所で自殺をしてしまう。

25年後、かつて父親が誕生日にくれた「紳士泥棒アルセーヌ・ルパン」の本に触発されたアサンは、巧妙な手口でペレグリーニに復讐しようと計画する。もちろんそれは、ネックレスを奪うことだけが目的ではなく、真実を明らかにし、父親の死の責任を負わせたいという気持ちからだった。


190㎝の大柄な身体にしなやかな身のこなし、シリアスな場面でも、どこか楽観的でキュートなオマール・シーが泥棒に扮し、あますことなく魅力を発揮する。説得力のあるストーリー、適切なキャラクター設定、ミステリー、冒険、アクションの組み合わせで展開も早い、まるでジェットコースターのよう。


アサンがまだ子どもだったときに唯一の親を失うという悲劇にもかかわらず、『ルパン』は誰もが楽しめるような明るく気楽なエンタメ作品になっています。
2021年最も楽しいドラマの1つであることは間違いないでしょう。

海外ドラマ Amazon経由でSTARTZPLAY『ふつうの人々 / Normal People』を見てみた。

年末年始はどこにも出かけず、自宅にこもっていました。正月は、長男は1日だけ、次男は帰省しませんでした。
暇を持て余し、気になっていたSTARZPLAYが昨年12月からAmazon Prime Video経由で見れるようになったので、見てみることに。初回時7日間は無料で、その後はオプション料金(月額600円)がかかります。
特にこれがみたいというタイトルがあったわけではなかったので、まずはIMDbで評価が高い『ふつうの人々』を見始め、途中でフェードアウトしそうになるも全話(30分12話)見ました。
BBC3とHuluの共同制作ということですが、見れるのはHuluではなくSTARZPLAY なんですねー!STARZPLAYの魅力はそこでしか見れない海外ドラマが他にもたくさんあることです。興味のある人はまずは無料で試してみてはどうでしょう。


以下ネタバレ含みます。
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Amazon.co.jp: ノーマル・ピープル シーズン1 (字幕版)を観る | Prime Video

アイルランドの作家、サリー・ルーニーの2018年の同名小説をべースにしたドラマ。アイルランド西部の田舎町の高校でクラスメートとして出会った二人、マリアンとコネルの高校3年からトリニティ・カレッジの大学生活までをたどります。

マリアンは母親が弁護士で立派な家に住んでいますが、お世辞にも温かい家庭とはいえず、家では勉強・読書をし、一人で食事をとっています。
コネルの母親はマリアンの家で家政婦の仕事をしています。コネルは母親が仕事が終わる頃、マリアン宅へ車で迎えに行った際、何度かマリアンと話しをするうちに二人は少しずつお互いを意識するようになります。

コネルはスポーツマンで人気者なのに対して、マリアンは可愛いけれど、難しい性格で学校では孤立しています。そんな二人が付き合うようになるも、コネルは仲間に詮索されるのを心配し、二人の関係を秘密にしようと言います。ここで、何とまぁ利己的な、、と思うのですが、その後、彼はまたもやらかしてしまうことに。友人たちの手前、学校のプロムの相手として別の女子生徒を誘ってしまうのです。はい、マリアンはひどく傷つきます。

その後、二人は同じ大学へ進学するのですが、お金持ちのマリアンはアイラインを上手に引きクールな女子学生に変身した一方で、田舎から都会に上京したコネルは大学に馴染めずにいます。ここでちょっとした逆転劇が演じられるわけです。裕福な同級生に囲まれる中、コネルは家賃を払うのに苦労し、自分が部外者であると感じます。

マリアンはセレブな男子学生と付き合っていましたが、学内でコネルと再会したことで、結局コネルの元に戻ります。二人は(別の恋人がいたときでさえ)お互いが特別な存在だと感じ、再開と別れのサイクルに入ります。


ミレニアル世代向けのドラマでしょうか。肉体的親密なシーンは、二人の非常にプライベートな時間を除き見ているような気分に。動画配信サービスで他人の朝のルーチンを見ている分はいいけれど、これはなかなかねー。しかし、これなくしてこのドラマは成り立たないし、ここまで人気が出なかっただろうと思う。

マリアンとコネル以外は「その他登場人物」としてかなりラフに描かれていて、ほとんど印象に残らない。存在感があったのはコネルの母親くらい?このドラマに、彼らに影響を与えるような、成熟した大人の男は登場しない。
マリアンの母や兄があんな風になってしまった背景は、いくつかヒントはあったけれど、実際はよくわからなかった。もう少しだけ深堀りしても良かった気がする。

しかし、ドラマのエンディングは良かった。マリアンとコネルが感情に流されず、行くべき道を選択したことはめでたし、めでたし。これは次シーズンへの前振りなのかもしれないが。
マリアンが「美しい文章」と評したコネルの小説がドラマでは紹介されることがなく、どんな作風なのかわからなかったのはちょっと残念。彼は一体どんなことを書いていたのだろう。


サリー・ルーニーの別の本『Conversation with friends』もBBCでドラマ化が控えているようです。
STARZPLAYでは他にも『ギャング・オブ・ロンドン』や『ダブリン殺人課』を見ました。また次回に書きたいと思います。

2020 マイベスト 海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説

昨年に続いて、2020マイベストを書きたいと思う。

2020海外ドラマベスト



1.『クイーンズ・ギャンビット』アメリカ)Netflix
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今年はこれしかないでしょう。ここにも書いたが、脚本が秀逸。冷戦期のチェスの天才少女が大人になり、チェス・クィーンになってゆく姿を描く。チェスが知らなくても大丈夫、見ていない人はぜひ見てみて。

2.『カリフェイト』スウェーデンNetflix
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衝撃的という意味ではこれが一番だった。スウェーデンで暮らす難民やイスラム教徒の若者を言葉巧みにテロ集団ISISに勧誘していく物語と、シリアへ渡りISISメンバーの妻になった女性が夫に隠れて母国スウェーデンに戻る方法を模索する物語が並行して描かれる。ドキュメンタリーのようなリアルさに目が離せなくなった。

3・『ラスト・キングダム』シーズン4(イギリス)Netflix
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Netflixで最も過小評価されているドラマ(と思う)。今年シーズン4が公開されて、ますます面白くなってきた。チーム・ウートレッドの今後が楽しみに。

4・『Giri/Haji』(イギリス)Netflix
主人公は刑事役の平岳大、その弟に窪塚洋介、ヤクザの親分に本木雅弘という、なんとも味のあるキャスティングで制作されたBBCのリミテッド・シリーズ。死んだと思っていた弟が、ロンドンで暴力団の抗争に関わっていると知らされた健三は、兄弟の「義理」からロンドンへ飛び、捜査に乗り出すことに。

5・『ブリーズ ~光と影~』(インド)Amazon
インドドラマ『ブリーズ』のシーズン2。前シーズンは、ルールもモラルもない一昔前の刑事ドラマという感じだったが、シーズン2はまたちょっと趣向を凝らした物語になっている。6歳の少女が誘拐され、犯人は父親に驚くべき要求をしてくるというもの。途中で犯人がわかってしまうが、それはあまりにも意外な人物だった。

6・『THE HEAD』(スペイン・スウェーデン)Hulu
ポラリスVI南極科学研究基地では、10名の越冬隊のみが残って南極を覆う極夜を耐え忍び、研究を6ヶ月間続けるはずだったが、冬が明ける3週間前に彼らとの連絡が途絶える。心配になり駆けつけたヨハン率いる救助チームは恐ろしい光景を目にする。日本でも話題になったHuluオリジナルのミステリー・ドラマ。

7.『ザ・ストレンジャー』(イギリス)Netflix
ハーラン・コーベンの小説を基にしたリミテッドシリーズ。妻の秘密を見知らぬ女性から聞かされたことで、郊外に住む一見すると幸せそうな家族の生活にひびが入っていく。

映画(今年わたしが見たものなので、公開が今年でない作品も含んでいます)



1.『これが私の人生設計』Amazon
2016年の作品をAmazon Primeで視聴。イタリア映画なので、知っている役者は皆無だが、とにかく傑作。世界的に活躍していた有能な女性建築家が母国イタリアに戻り、男社会の壁にぶつかりながら奮闘するコメディー。

2.『キーパーある兵士の奇跡』
イギリスの国民的英雄となった元ナチス兵のサッカー選手バート・トラウトマンの実話を基に描いたヒューマンドラマ。逆境を乗り越えていく主人公の姿に勇気づけられた。

3.『家族を想うとき』
ケン・ローチの映画。泣いた。

4.『ジョナサン ふたつの顔の男』Amazon
2018年公開の映画をAmazon(吹き替え版しかなかった)で視聴。正反対の2つの人格を持つ青年を演じたサスペンス・スリラー。

5.『ダウントンアビー』
全6シーズン放送されたドラマ版の最終回から2年後のクローリー家が描かれる。BGMを聴いただけで、何とも懐かしい気持ちがこみ上げてきた。息の合ったキャストが最高。

6.『グッドライアー 偽りのゲーム』
どんでん返しに拍手。

海外ミステリー小説



1.『たとえ天が堕ちようとも』アレン・エスケンス前作『償いの雪が降る』に登場したの刑事マックス・ルパートと弁護士ボーディ・サンデンによるリーガル・ミステリー。前作の主人公ジョーは登場こそしないが、恋人ライラの口から、彼が社会人になっていること、弟のジェレミーもいっしょにいることがわかり良かった。続編も楽しみに。

2.『笑う死体』ノックス ジョセフ

日の当たる場所には出られないマンチェスター市警エイダン・ウエィツのシリーズ第2弾。前作には明かされなかったエイダンの忌まわしい過去に驚愕。ドラマ化されるのだとか。

3.『三分間の空隙』アンデシュ ルースルンド , ベリエ ヘルストレム

『三秒間の死角』の続編で、前作を凌ぐスケール、アクションになっている。お馴染みのグレーンス警部が重要な役どころで登場する。次は「三時間」か?待ち遠しい。

3.『グッド・ドーター』カリン スローター

母親を目の前で殺され、暴力をうけた姉妹がやがて別れ、28年ぶりに事件の真実を見いだす再生の物語。スローターの本は残酷でどこまでも痛い。痛いけれど読まずにはいられない。

4.『ネヴァー・ゲーム』ジェフリー・ディーヴァー

懸賞金ハンターのコルター・ショウの活躍を描く、ディーヴァーの新シリーズ。冒頭から心を鷲掴みにされた。

5.『その裁きは死』アンソニーホロヴィッツ

鉄板の面白さ、美しく伏線が回収されていく様に感動。二人の会話を今回もおおいに楽しんだ。

6.『ストーンサークルの殺人』M W クレイヴン

年配男性がストーン・サークルで殺される連続殺人事件が起きた。事件は凄惨だが、捜査が進むにつれ国家犯罪対策庁のワシントン・ポーと天才分析官ティリー・ブラッドショーの友情が清涼剤に。

7.『黒と白のはざま ザ・プロフェッサー』ロバート・ベイリー
親友の冤罪を晴らすべく、ロースクールの元教授トムと教え子リックが法廷に立つ。前作でトムをバックアップしたボーセフィス(ボー)の過去が明らかに。

8.『発火点』C・J・ボックス
猟区管理官ジョー・ピケットのシリーズ最新刊。大自然を舞台に展開される冒険サスペンス。

9.『老いた男』トマス ペリー
任務中にアメリカ政府と対立した工作員が30年を経て、襲撃されたことで平穏な生活が一変する。一気読みした。


昨年のベストはこちら。
2019年海外ドラマ、映画、海外ミステリー小説 ベスト10 - misasa104の海外ドラマ日記

海外ミステリー小説:シリーズものを愉しむ

久々に本のこと。ドラマの好みと同じで主に海外ミステリー小説を読んでいますが、あるとき、読みたい新刊がなくなったので、今まで読んでいなかったシリーズを最初から読み始めたら、これがすごく良かった。
シリーズの最新刊が出たとき、前作をなかなか思い出せないことがあったり、シリーズによっては物語のシーケンス通りに出版されないこともあるので、順を追って続けて読めるのはストレスフリーで、シリーズの醍醐味を存分に堪能できます。

そこで、おすすめシリーズの本(映像があればそれも)を紹介したいと思います。海外ミステリーのシリーズものは、過去を遡れば有名どころがたくさんありますが、今回は現在進行形のものを中心にします。

アメリカ>
● C・J・ボックス:ジョー・ピケットシリーズ

夏ごろに読む本がなくなり、何気なく1巻目を読んだらその面白さにはまってしまった。それで今年刊行された最新刊(13巻目)の『発火点』まで一気に読了。
ワイオミング州の州猟区管理官ジョー・ピケットを主人公にしたシリーズ。猟区管理官とは、広大な土地をパトロールし、野生生物を保護、管理し、密猟者を逮捕する権限を持つ法執行官で、実はこの本を読むまでは知らなかった。ジョーは、ミステリ界では珍しく(!)幸せな結婚生活を送り、特別な才能があるわけでも、過剰な暗い過去があるわけでもなく、ヒーロー像からはほど遠いが、「正しいこと」を貫くべく全力で仕事に向き合う。ジョーの相棒で、野性的な魅力が溢れるネイト・ロマノウスキがさらにこのシリーズを盛り上げる。
昔好きだったディック・フランシスの競馬シリーズと比較されることも多いよう。このシリーズが何年にも渡りいくつもの賞をもらっているのも納得。

テキサス猟区管理官の日常 – Discovery Channel Japan | ディスカバリーチャンネル
本とは直接関係ないが、Dplayで無料公開されている『テキサス猟区管理官の日常』で、猟区管理官の仕事を垣間見ることができる。
ボックスの別シリーズ本『ハイウエイ』は、ABCでドラマ(タイトルは『Big Sky』)化されて現在本国で放映中。


ジェフリー・ディーヴァーリンカーン・ライムシリーズ

四股麻痺で法医学の天才リンカ―ン・ライムが難題を次々と解決し、犯人を追い詰めるシリーズ。昨年刊行された『カッティング・エッジ』が14作目。新刊が出版されたら、迷いなく買うシリーズの1つ。
他にもライムシリーズに登場した人間嘘発見機キャサリン・ダンスを主人公に添えた魅力的なシリーズもあるが、今年出版された本はまったく異なるものだった。

懸賞金ハンターで、行方不明者を探すことを仕事にしているコルター・ショー。彼がその仕事を選んだ背景には家族の物語が起因していた。
重いハードカバーの本を仕事用のリュックに入れ、電車内と昼休みにずっと読んでいた。こちらもシリーズとなり本国では2作目が出版されている。

ボーン・コレクター (字幕版)(2000)
日本で2000年に公開されたシリーズ1作目の映画化。本ではリンカーン・ライムは白人だが、映画ではデンゼル・ワシントンが演じている。アメリアはアンジェリーナ・ジョリー
Lincoln Rhyme: Hunt for the Bone Collector - NBC.com
今年、NBCでドラマ化されたが、残念ながら1シーズンで終了のよう。アメリアやロン・セリットー介護士トムなどのお馴染みの登場人物が映像で見れるのは嬉しいので、日本で公開されたら見てみたい。


マイクル・コナリーハリー・ボッシュシリーズ

最新刊『汚名』はシリーズ20作目なんですね、すごい。ハリーはもう60代半ば。この本を読んでいる最中、何だか既視感を覚えると思ったら、Amazonのドラマで見ていたのだ。そして、こちらはロス市警ハリウッド分署深夜勤務女性刑事レネイ・バラードの新シリーズ。今年出た2作目の『素晴らしき世界』では何とボッシュと共演。といってもちらっと登場するだけなんでしょう、と思っていたら、最初からガッツリ登場。今後の展開が気になるー。

BOSCH / ボッシュ オフィシャル トレーラー シーズン1
Amazonオリジナルの代表ドラマと言ってもいいでしょう?


● J・D バーカー:四猿シリーズ

帯にジェフリー・ディーヴァー大絶賛!と書いてあったので読み始めたら、これがまぁ面白かった。今秋刊行された『猿の罰』でシリーズは完結。3部作なので、長編ミステリとして一気に読むと面白さが倍増するのでは。


● カリン・スローター:ウィル・トレントシリーズ

破滅のループ (ハーパーBOOKS)

破滅のループ (ハーパーBOOKS)

Amazon
スラム街にある養護施設で育ち、読み書き障害(ディスレクシア)がある、ジョージア州捜査局特別捜査官ウィル・トレントが主人公。カリン・スローターの本は中毒性が高い。
昨年『贖いのリミット』を読んだことをきっかけに今年、翻訳されている本を順に全て読んだ。もし映像化するならウィル・トレントを誰にキャスティングすべきか。ハンサムで、壮絶な過去を持つ男が似合うのは、、、と妄想が広がるー。


スウェーデン
● アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム:グレーンス警部&スンドクヴィスト警部補シリーズ

アンデシュ・ルースルンドは元々報道記者で、刑務所に関するドキュメンタリー番組を制作した際にベリエ・ヘルストレムと出会い、そこから二人の共作のこのシリーズが生まれた。『熊と踊れ』(ステファン・トゥンベリとの共著)の著者でもある。
ストックホルム市警のエーヴェルト・グレーンス警部とスヴェン・スンドクヴィスト警部補が活躍するシリーズとなっているが、最新刊『三分間の空隙』では『三秒間の死角』で同僚の内通者の運命を左右したエーヴェルトが、今度は脇役として重要な鍵を握り活躍する。

THE INFORMER/三秒間の死角(字幕版)(2019)
主人公ピート・ホフマン役はジョエル・キナマン(ドラマ『THE KILLING』や多くの映画にも出演、スェーデンを代表する俳優と言っていいでしょう)が演じている。だから、『三分間の空隙』を読んでいる間、ピートはジョエル・キナマンその人だった。いやぁ、素晴らしい。


● ラーシュ・ケプレル(スウェーデン):ヨーナ・リンナ警部シリーズ

1作目を出版した頃は、ペンネーム以外のプロフィールの不明だったため本国では正体探しに懸命だったらしいが、実はそれぞれが別分野での小説を書いているアンドリル夫妻の共著名だとわかった。今やスウェーデンでは爆発的なヒットになっているのだとか。シリーズは、現時点で4冊が翻訳済み。
主人公はフィンランド出身で、現在はスウェーデンに住んでいるヨーナ・リンナ警部である。

ヒプノティスト 催眠(字幕版)(2013)
シリーズ1作目『催眠』を映画化。かなり前にこの映画を鑑賞し、しばらく後に小説が原作だと知った。シリーズを読了してから、最近再び視聴してみたところ、小説のヨーナ・リンナとうまくリンクしなかった。それは最新刊『砂男』でヨーナの過去を知り、衝撃のラストを目撃してしまったせいなのかも。ええぃ、早く次が読みたい。


ノルウェー
ジョー・ネスボハリー・ホーレシリーズ

安定の面白さ。1作目を読んで以来、ジョー・ネスボの本は見逃さない。『ファントム』はシリーズ9作目。もっと読んでいるような気がしたのは、シリーズ外の本を読んでいたからか。今から『ファントム』を読むところ。

スノーマン 雪闇の殺人鬼(字幕版)(2017)
マイケル・ファスベンダー演ずるハリー・ホーレがいい。


<イギリス>
● アンソニーホロヴィッツホーソーンホロヴィッツシリーズ

昨年、わたしのミステリー小説ベスト1となった『メインテーマは殺人』の続編。主人公は著者その人「わたし」と元刑事ホーソーンのコンビ。二人の掛け合いがたまらなく楽しい。1作目がとても良かったので、2作目はどうかと心配したら、負けず劣らずの傑作だった。
カササギ殺人事件』『メインテーマは殺人』、そしてこの『その裁きは死』の表紙デザインがお気に入り。

アレックス・ライダー | AXNジャパン
アンソニーホロヴィッツの小説をドラマ化した『アレックス・ライダー』をAXNで見ていた。どちらかというと若い人向けという感じ。重過ぎないのがいいのか。


イアン・ランキンリーバス警部シリーズ

スコットランドエジンバラを舞台にしたシリーズ。1作目では若い刑事だったリーバスも定年になりその後にフリーで仕事をしていた。最新刊『寝た犬を起こすな』で復職するが、階級は格下げとなり元部下の配下になり微妙な関係に。また、今まで敵のような存在だった監察課のマルコム・フォックスと手を組むことで二人はお互いを認めるようになる。
はい、この日を待っていました。


● ノックス・ジョセフ:マンチェスター市警 エイダン・ウェイツシリーズ

今のところ、翻訳されているのは『堕落刑事』と『笑う死体』の2冊。2作目は前作より断然良かった。
ウェイツは若いが、既に人生はめちゃくちゃ、生きていくことすら困難な状況にも関わらず、事件を淡々と解決に導く。今後の展開から目が離せない。
本には関係ないけれど、著者がイケメン過ぎません?写真を見てみて。


<フランス>
● ソフィー・エナフ:パリ警視庁迷宮捜査班シリーズ

警視庁の落ちこぼれ、曲者ばかりを集めた捜査班の活躍を描く。フランス版<特捜部Q>シリーズと言われているようだが、こちらの班のメンバーは40人ほどいるらしい。でも安心してください。実際に稼働しているのは10人に満たないので、名前が覚えられないなんてことにはなりません。
班員の一人一人が癖が強いが生き生きと描かれている。ユーモアがあって人間愛に満ちているのだ。


今年読んだ本を中心に紹介しました。ほかにも エイドリアン マッキンティのショーン・ダフィーシリーズや、先に書いたユッシ・エーズラ・オールスンの特捜部Qシリーズなどもおすすめです。

海外ドラマ Netflix『クイーンズ・ギャンビット / The Queen's Gambit 』

たまたま見つけて見始めたNetflixオリジナルドラマ『クイーンズ・ギャンビット』が面白い。1950年代に孤児院で育った少女がチェスの才能を開花させていく姿を描くリミテッド・シリーズで、 原作は『ハスラー』『地球に落ちてきた男』で知られるウォルター・テヴィス、そして、クリエーターは『ゴッドレス』のアラン・スコットという。チェスについてほとんど知らないわたしでも、このチェス中心に展開するドラマに魅了され途中でやめることができなくなってしまった。今年一番の傑作シリーズといってもいいのではないでしょうか。

以下ネタバレを含みます。

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https://www.netflix.com/jp/title/80234304

母親を亡くしたベス・ハーモンはケンタッキー州の孤児院に預けられる。孤児院では、子どもたちの鎮静剤と​​して州が提供する精神安定剤を毎日飲ませていた。あるとき、州はそれを禁止することになるのだが、ベスは薬の依存症になっていた。

施設の地下室にいる寡黙な用務員が一人でチェスを指しているのを見つけたベスは、そのゲームに魅了される。そして二人は密かに静かに対局するようになり、ベスは子どもながらにして驚くべき才能を発揮する。それを認めた用務員は、高校のチェス部の顧問をベスに紹介し、ベスは高校に出向いて、チェス部の何人もの男子学生と同時対局を行うようになる。

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その後活躍するベスを用務員はずっと誇らしく感じていたに違いない。


ある日、ベスが精神安定剤の入った巨大な瓶を盗もうとした後、院長は彼女にプレーするのを禁ずる。孤児院での生活は楽しいものではなかったが、まだ子どものベスは、親友のジョリーンと冗談を言うことによって生き延びていた。ベスがティーンエイジャーになり、養子縁組されると、彼女なりに新しい生活に慣れようと努力する。しかしベスのチェスへの執着は並外れたものではなかったので、チェスの大会に参加するため彼女は奔走する。そしてベスはすぐに競争の激しいチェスの世界に飛び込み、次々にランクを上げていくことにー。


ベスは子どもの頃のトラウマを抱えながら競争に勝つために、養母の精神安定剤をくすねては飲み、アルコールを乱用するので、見ているこちらはハラハラしてしまうのですが、それがまたこのドラマに惹きつけられてしまう要因にもなっています。

7話は長いと言う人もいるかもしれませんが、わたしにはまったく無駄なものはないように感じられました。どれも必要で、やり過ぎない知的な執筆はバランスが良くて、高揚感高まるものになっています。いいドラマはキャスティングも素晴らしいと感じることが多いですが、今回も、もちろんそう思います。

アニャ・テイラー=ジョイは、素晴らしいパフォーマンスを見せ、ベスの約10年間を演じています。まだぎこちない若いチャンピオンかと思っていたら、さなぎから蝶のように変身を遂げ、魅力的な女性に成長し、対局中は、その人形のような顔に感情的な目をキラキラさせて視聴者を釘付けにします。ベスの子ども時代を演じたアイラ・ジョンストンもすごく良かったです。

ケンタッキーのチェスチャンピオン、ハリー・ベルトク役のハリー・メリングは、過去にはハリーポッターで甘やかされて育ったいとこダドリーを演じていましたが、今はその面影はあまり残っていないようです。最近見た映画『キーパー』でも味のある役どころで、わたしの中では今注目の俳優です。米国のチャンピオン、ベニー・ワッツ役のトーマス・ブロディ=サングスターと共に、チェスの世界に彩りを添え、ベスがアルコール依存という穴に落ちそうになるとき、彼らは理性の声としても機能します。

ベスの養母になったアルマ役のマリエル・ヘラーはどちらかというと映画監督としてのイメージが強いですが、愛のない結婚生活に閉じ込められている主婦役にフィットしていました。最初、ベスが引き取られたときは、どんな家庭だろうと不安になりましたが、ドラマにありがちな養母と娘のような関係にはならず、それぞれ失ったものを埋めるかのように親密な関係を築いてゆきます。それは、二人が最も必要としているときにお互いをサポートするくらいに。わたしは正直で計算のないアルマが可愛らしく感じられて、彼女がベスの母親になったことで幸せそうにしている様子に心温まりました。

それから、1960年代のセットや衣装をぜひ見てみて。本当に見事で素敵ですから。
ーと書いているうちに、もう一度見たくなりました。

海外ドラマ 今、毎週見ている番組

毎週視聴している番組を紹介します。何も見たいものがないといったシーズンもあるんですが、この夏は今までで一番録画している気がします。


ブリティッシュ ベイクオフ シーズン8:FOX (Huluでも配信)
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新装開店となるリニューアル第1弾シーズン! イギリス全土から選ばれたアマチュアの参加者12人が、オーブンを使って菓子やパンを作るベイキングの腕を競う。シーズン4から見ているが、ケーキやパンを作ったことがない私でもハマった大好きな番組。Dlifeの後どうなるかと思っていたら、FOXで放送となった。ありがとう。今一番楽しみな番組。今シーズン優勝するのはきっとあの彼に違いないでしょう。


レジデント 型破りな天才研修医 シーズン3:FOX
ジョージア州アトランタにある有名総合病院を舞台に、現場で命と向き合う若き研修医の奮闘を描く。主人公コンラッドとニックのいちゃいちゃが面倒くさいけれど、きっと需要があるんでしょうね。医療ドラマにサスペンス要素もあって面白い。サブキャラのミーナとAJはお互い意識はしているけれど、部下と上司という距離を保っているのがいい。


9-1-1:LA救命最前線 シーズン3:FOX
救命オペレーターが受ける通報を軸に、最前線で奮闘する消防士・警察官の姿を描くヒューマン・ドラマ。ということで、登場人物はトラウマ・コンテストに集まった参加者のよう。やはりこのドラマはライアン・マーフィーなのだ。そして、ロブ・ロウリヴ・タイラーが出演するスピンオフ『9-1-1:Lone Star』が本国では今年はじめに放送された。


SEAL Team/シール・チーム :FOX
ネイビーシールズの精鋭部隊B(ブラボー)チームの活躍を描く。『BONES』のデヴィッド・ボレアナズがチームリーダーのジェイソンを演じている。SEALチームのドラマは他にもあるけれど、堅実なキャラ設定がいい。『ベイツモーテル』でノーマンの兄ディラン役のマックス・シエリオットがムキムキになって登場しているのも見どころ。


シカゴ・ファイア シーズン7:AXN
モテキャラだったセブライドが、ステラにもフラれ、今シーズンはいいことなし。ケイシーも妻のドーソンがいなくなり、女性記者と一時はいい感じになったものの、結局実らず。その脇で、シルビーと牧師カイルのカップルは新鮮に感じるけれど、どうなるんでしょう。行き着くところ、シルビーはケイシーと結ばれるのか。内輪カップルばかりでなくてもいいのでは?と思うのでは私だけでしょうか。


シカゴ P.D. シーズン6:AXN
シカゴシリーズの中ではこれが1番好み。メンバーは皆スマートでスタイリッシュ。これぞ、アメドラ!という感じ。バージェスのヘアスタイルがゴージャスでいつも見入ってしまう。シーズン4からメンバーに加わったアプトンはキャラが確立し今やなくてはならない存在に。アントニオがクスリに依存してしまうエピは、見ているのが辛かった。ジョン・セダが今シーズンで降板するのを知らされているだけに。


レッドライン ~悲しみの向こうに:スパドラ
誤射事件で家族を失った白人の父親と黒人の娘の物語で『ER 緊急救命室』のノア・ワイリーが主演。上のシカゴシリーズとはちょっと違ったシカゴの風景が見れる。けれども、少々見続けるのがしんどくなってきた。


FBI:特別捜査班:WOWOW
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シカゴシリーズに続くディック・ウルフのショー。夫を亡くしたマギーとジダンの男女コンビがメインであまりパッとしないなぁと思っていたが、L&Oのジェレミー・シストが懐かしくてつい見てしまう。最近、別のチームが活躍するエピソードが放送されたのでピンときた。やはりスピンオフらしい。調べてみるとすでに米国では今年1月に『FBI: Most Wanted』が放送されている。FBIの最重要指名手配リストにある容疑者の追うチームのドラマということ。日本で放送されれば見るでしょう、たぶん。


グッド・ドクター3 名医の条件:WOWOW
WOWOWでのシーズン3の放送は終了。一番のお気に入りキャラのメレンデス医師は次シーズンの登場は絶望的に、そしてパク医師は家族のいるアリゾナに戻りたいと言う。モーガン・レズニックにいたっては外科医としてのキャリアが終了したようだった。ご都合主義的な感じもするけれどショーンとリアはカップルに?一体、次シーズンはどうなるのか。


こうやって書いてみて気づいたんですけれど、ブリベイ 以外はすべてアメドラですねー。それにしても、好きなジャンルの幅が狭いことといったら。こればかりは今後も変わらないでしょうね。

海外ドラマ Netflix『The Sinner -隠された理由-』シーズン3

少し前まで、見たい海外ドラマがないかなぁとNetflixをサーフィンして、結局何も見ない、なんてこともあったのですが、ここ最近、立て続けに好みのドラマが公開されると、今度は何から見ようと悩むことに。先に『マーチェラ』を見ようと思っていたんですが、1話目の途中から字幕の表示タイミングがずれるバグがあった(今は解消されているよう)ため、犯人役がマット・ボマーと知り、マイリストに追加したばかりの『The Sinner』を見てみることに。

サブタイトルからもわかるように、『The Sinner』はホワイダニットのドラマです。2017年、Netflixにこのシリーズが登場すると、そのオープニング・シーケンスの犯罪シーンがセンセーショナルだと話題に。
普通の人でも、きっかけがあれば異常な犯罪者になってしまう、というのがテーマのように思います。

最初のシーズンから、事件を担当するのは熟年刑事ハリー・アンブローズ。彼は、ほかの刑事なら見逃してしまうような些細なほころびを見つけ、容疑者に寄り添い、その動機に迫ります。といっても、彼が優秀な刑事として描かれるわけではありません。むしろ、様々な問題を抱えていて、自分が抱えているトラウマに対処することに時間を費やしているようにもみえます。

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The Sinner | Netflix Official Site

ジェイミー・バーンズ(ボマー)は高校の教師で、おしゃれなエッセンシャル・オイルの店を持つ妻リーラはもうすぐ子どもが生まれそうです。ある日、ジェイミーの大学時代の友人ニック・ハースが彼らの家を訪ねたことで、ジェイミーの穏やかな生活は一変します。リーラはそれまでニックのことをジェイミーから聞いたことがありませんでした。その夜、ジェイミーとニックは二人で出かけ、地元のアーティスト、ソーニャが所有する土地で自動車事故を起こし、ニックは死んでしまいます。一見悲劇的な事故のように見えましたが、アンブローズの本能は殺人事件として調査するよう告げます。

今シーズンの見どころは、マット・ボマーに尽きるといってもいいでしょう。ボマーの瞳を見ていると日によって変わる秋空を連想してしまう。彼は(言うまでもなく)ハンサムなので学校中の女子生徒のあこがれの先生だったけれど、本人は3歳児程度の自意識しか持ち合わせていなかったよう。彼はその容姿と努力で何でも手に入れられたかもしれないのに、学生時代にニックと出会い、生死の境を歩くようなスリルにハマったことで、彼は再び危険な行為を求めるように。


ジェイミーが仕事熱心な教師から殺人者へ変わっていく様子に釘付けになりました。今シーズン、アンブローズが最後にとった行動は許されるものなのか。次シーズンがあるらしいけれど、一体どこに向かうのでしょう。